08/10/03(金) 晴れ
[Nailobi:Kenya→Moyale:Ethiopia]
・砂漠の道を走る
・沿道の集落、石を投げる子ども
・らくだの群れ
・国境にも届かず
・満天の星空
気がついたら外が明るくなっていた。トラックは相変わらず走り続けている。昨日の夕方ナイロビを出て2日目。エチオピアとの国境であるモヤレに向かう。
ちなみにケニアからエチオピアに行くこのルートは一般的には危険だと言われている。理由は盗賊が出るから。こうして荷物を運んだりしているトラックを襲い、金品を持ち去っていくらしい。だから一般的にはこのルートを避ける。つまりは陸路ではなく、空路で移動するのを選ぶ。だが、途中で会った旅行者の中にはエチオピアから陸路でナイロビに行ったという人が少なからず(と言っても母数が10人もいないというほど少ないんだけど)いた。またエチオピアの国境とナイロビをつなぐルートは2通りあって、一方は所要時間は比較的短いが危険、もう一方は時間はかかるが比較的安全というような噂だった。トラックに乗る前に運転手に聞いた話では前者のルートを行くというようなことを言っていたのだが、後に後者のルートを通ったとことを知る。
上記のようにこのルートは危険だからか、道が整備されておらず、公共交通機関もないに等しい。南アフリカからナイロビまではバスターミナルに行ってそこから出ているバスに乗って移動はできたが、このルートはそれができない。ぼくらが乗っているようなトラックに乗るか、週に数本しかないバスに乗るしかない。
今日も天気はよい。このトラックに乗っているのはぼくとA君、エチオピア人のきょうだいやケニア人たちばかり。まぁ、地元の人が使っているならそこまで危険ではなかろう。運転手はケニア人、ぼくらの後ろに座っているきょうだい(兄と妹)はエチオピア人。彼らはスワヒリ語がわかるから運転手とはスワヒリ語で話をしている。彼らはエチオピアの言葉であるアムハラ語、スワヒリ語、そして英語と3つの言葉を使えるよう。
フロントガラスには見事なひびが入っているのだけれど、助手席に座っているからまわりの景色は良く見える。あたりはほとんどまっ平で、半分砂漠。というか、砂漠そのものかもしれない。
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高さ1m足らずの木々が一応は生えているのだが、葉はない(というかそういう植物?)し、青々とはしていない。要は一面が緑というような風景を見ることはない。
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道は舗装されておらず、車が走った跡が道になっている。
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人の姿も見ないからここらには人は住んでいないのだろうと思っていたら、いた。水を運ばせているらしくロバに20リットルくらいのプラスチックボトルをくくりつけ、一緒に歩いている。その男性はゆったりした大き目の白の長袖シャツに下はサルン(足首まである布を腰に巻いたもの)を履いている。細身だった。
7時ごろ、なぜかトラックは停車。パンクなのか何なのか修理っぽいことを始める。後ろから同じようなトラックもやってきて、トラック2~3台が止まっての休憩となる。もちろんまわりには商店も物売りの人も集落もないから何か食うものなりを買おうと思ってもない。
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トラックには運転手のほかにそのアシスタントみたいな男が一緒に乗っていて、そうした事態になると彼が動く。運転席下の葉っぱも彼が掃除をする。身長は180cmくらいあるが人懐っこい雰囲気で挨拶をするとにこっとして返す。見た目は20代半ばくらいに見えるのだが、もっと若いかも。
修理が終わり再び発車。運転手はアシスタントの彼が荷台に乗り込む前に走り出す。運転手はミラーで彼の様子を見ながらにやけている。アシスタントの彼も笑いながら全力ダッシュ。そして適当なところを手がかりにしてトラックにつかまり、一気に荷台の上まで登る。ぼくらは「いやぁ、元気だねぇ」と笑う。
それからしばらく行くと集落が現れた。すっかり人など住んでいないところを走っているもんだと思っていたので、ちょっと驚く。
家は骨組みを組んだ上からバサッとわらを重ね置きしたような家。どこが入口なのかわからない。そういう家がパッと見で50軒ほどある。しばらく行くと木の枝を編むようにして壁にしたわりとしっかりした家やレンガ積みでトタン屋根の家も見える。子どもを連れた女性を見たり、ロバやらくだを引いた女性を見たりする。女性はモロッコと同じように頭から足首まである布(ワンピース?)を着ている。黒もあれば濃い赤や緑やさまざまな柄が入ったものなど、その色はさまざま。なかなかきれいだ。
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集落を抜けるとまた砂漠のような景色になる。車の前方をマイクロ小鹿とでも呼びたくなるような小さく細い動物が南東も横切る。あれは何という動物なんだろう? その他、走っていたら名も知らぬ動物を見る。飼われているのかどうかは知らないけどダチョウも見た。有名どころのライオンやシマウマ、象、きりんなどは見ない。今回のアフリカ旅行ではサファリには結局行かなかったが、タンザン鉄道とこれでちょっとはサファリ気分が味わえたから“まぁいいかな”という気になる。
しばらくそうしたところを走るとまた集落に入る。道端で遊んでいた子どもたちがトラックをよけて端による。そしてこっちを見ているから窓からA君が顔を出して見ると子どもたちは驚いてあとづさりしながらも石を投げてくる。もっともみな5~6歳くらいだから投げる石も小石。この反応には2人して苦笑い。
ある集落に入ったとき初めての食事休憩となる。ぼくはチャイとビスケットを買う。怖いもの見たさなのかさっき石を投げてきたくらいの子どもたちが5~6人集まってきて、ぼくらを遠巻きに見ている。その距離2~3mほど。子どもたちはそれ以上近づこうとしないので、こちらから寄っていこうとすると驚いて背を向けて逃げ出そうとする。近づくのをやめるとまたさっきと同じくらいの距離まで戻る。A君がふざけて「やー!」と空手の構えのような適当な構えをしたらみな驚き、逃げようとする。中には石を拾って、こっちに投げるぞという威嚇をする。ビスケットを買ったお店のおばちゃんは面白そうにそれを見ていた。あちこちで子どもには会っているけど、こういう反応をする子どもたちは初めて。子どもたちにすれば肌が黒くない人を見るのは初めてだったのだろう。
30分ほど休憩して、再出発。
14時ごろ、パンクなのかまたもやトラックは緊急停車。ぼくらは乗ったまま再出発を待つ。
再出発後、さらに走る。沿道に見える家は半球形の家が多い。建築途中らしいものからそれらの家は木の枝で骨格が作られ、その上に藁みたいなものを被せて造っているらしいことがわかる。中には藁に混ぜて服も家を覆う材料として使っている家もあった。それにしてもここらの人たちはどこで水を手に入れているのだろう?
16時ごろ、道端の商店前でトラックは停車。A君はオレンジジュースを買っていた。ぼくは何も買わず。結局、この日は小便も1回したくらいで大便なし。口に入れたものも小さい小袋のビスケットのみ。もっとも車に乗っているだけだから腹も減らないし、暑くないから喉も渇かない。
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昨日、出発前に聞いた話ではエチオピアとの国境まで1泊2日だと聞いていた。だから今日の夕方、もしくは夜には着くのだろうと思っていたが、たまたま途中でみたまちの名前を手元のアフリカ地図に探してみると、国境まではまだまだある。とても今日中には着きそうにない距離だった。
それにしても運転手は何度か休憩はしているものの昨日から寝ていない。彼の目を見るとビキビキに充血している。大丈夫かと聞くと大丈夫だと言うのだが、運転しながらときおり「ぅワァァァー」と言って突然叫んだりしているから相当眠そうだった。ぼくなんかは何もしていないのにしょっちゅう居眠りしているのに、なかなか根性あるなぁ。
やがて日が暮れ、やはり今日中には着かないのだなと諦めモードになる。22時くらいまで運転手はトラックを走らせ、適当なところで止める。さすがに今晩は寝るらしい。運転手らは外に行き、戻ってこないから外で寝ている模様。ぼくもちょっと外に出て、体をちょっと動かす。空を見上げると満天の星。他の国でも星空を見て、あまりに星が多いのに感心したが、ここはまた格別だった。この星空を見られたことでさっきまでの今日中に着かないのかという諦めモードは消え去り、なんだかすっきりした気分になる。月も異様に存在感があってその光は足元まで届いているような実感がある。
しばらく空を見上げて感心した後、トラックの助手席に戻って座る格好で寝る。
FIN
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