2011年1月3日月曜日

[diary]デリゾールからアレッポへ

デリゾールからアレッポへ

2008/11/25(火) 晴れ
[Dayr Az Zawr→Aleppo:Syria]

・アザーン
・早朝発の列車でアレッポへ
・きれいな車内、割れた窓、ジュースと飴
・アレッポのスーク、旧市街
・鋏(はさみ)屋、石鹸屋、オリーブ屋、映画館

真夜中の2時半頃、目が覚める。電気をつけたまま寝ていた。壁を隔てたフロントからは大きなテレビの音が聞こえる。

再び寝ようとするが浅い眠りの中でさすらう。4時半頃、近くにモスクがあったようでそこからのアザーン(礼拝の時刻を知らせる放送。ある時間になるとスピーカーから流れてくる。)でまた目が覚める。起きようかもう少し寝るか目を閉じたまま考えているうちに携帯のアラームが鳴る。結局、ほとんど眠れず。

荷造りをして、受付前のソファで横になって寝ている若い従業員を起こし、ホテルを出る。意外と寒くない。日は昇り始めたところでうっすらと明るくなっていた。

ホテル前のメインストリートを歩く。人影はほとんどない。歩いていたらワゴン型の乗り合いミニバスに乗って出発を待っている人たちが、珍しそうに車内からこちらをのぞく。

5分ほどでシティセンター近くの鉄道チケット売場に到着。表の通りには小型のバスが停まっていてすでに客が数人乗っている。バスの入り口のところにいた男性に聞くと、このバスが鉄道駅に行くバスらしい。

ぼくが乗り込んだ後からもばたばたと数人乗り込んでで来る。6時過ぎにバスはそこを離れ、鉄道駅へ。

途中、ユーフラテス川を渡り、10分程度で鉄道駅に到着。駅舎自体は小さいがきれいに整備されている。ホームにはすでに車両が入線していて、みなドアが開くのを待っている。
From syria


ホテルを出たときはたいして寒くないように感じたのだが、こうして何もせずに待っているとやや冷える。吐く息も白い。温度計を取り出して計ってみるとだいたい14度。

20分ほどホームで待ちぼうけ。6時半過ぎにドアが開き、乗車開始。外観は一昔前のデザインのように感じたが、中はとてもきれい。車両の真ん中あたりの天井には液晶のテレビがぶらさがっている。また隣の車両は食堂車だった。
From syria


From syria


汽車は6時50分頃、動き出す。ユーフラテス川と平行して走っているのだが、川からやや離れたところに線路が敷かれているためたまにしか川を見ることはできない。

発車して10分ほどした頃、添乗員が紙パックのジュースと飴玉、ゴミ袋、イヤホンを配って回る。約4時間の移動で2等席145シリアポンド(約300円)、さらにジュースのサービスとなるとかなりお得だ。座席間も広いから窮屈でもない。

線路沿いには広い畑が見え、それが切れるとコンクリートブロックで作った直方体型の家々やテント張りの家も見える。畑でなにやら仕事をしている人、羊を放牧している人、薪を頭に担いで歩いている人などを見る。たいてい電線は通っている。
From syria


車内ではイエメンかどこかのバスの中で見た映画でも主役だった人が出ているエジプト映画。前回見たものと同じどたばたのコメディ。英語の字幕が流れていたが、その切り替えのスピードにまったくついていけないため、内容がよくわからず途中で放棄。

そのうち寝る。

車内ががやがやうるさくて目が覚める。今し方停まった駅からけっこうが客が乗ってきたようで、どうも座席の番号をめぐってもめているよう。デリゾールから乗ったときは車内はがらがらだったので適当に窓際に座り、隣の席も占領していたのだが、そうしてもめているため係員がまわってきて乗客のチケットを確認しており、それに伴ってぼくも座席の変更を強いられる。

変わった先の座席は窓際だったものの進行方向とは逆向きかつ窓ガラスには大きなひびが入っていて、窓越しに写真を撮るには不都合なところだった。やれやれ。

隣は3歳くらいの息子をかかえたおじさま。その子どもは金髪に近く、肌の色もヨーロッパ系と同じくらいだから、ここであわなければおそらく東欧か南欧かの人かと間違っただろう。アラブ圏の人のイメージは日焼けした肌を持っているイメージだったが、実際来てみると驚くほど肌が白い人がけっこういる。特に女性はスカーフをかぶっていたりするからだろうか、日本人よりも白く見える。

こうした人をローマ帝国時代まで遡ってヨーロッパ系アラブ人と勝手に呼ぶとするなら、一方で車内には日焼けしたアジア系(ぼくの中ではアフガニスタン系のイメージ)の人もいる。こちらはベドウィンなど遊牧民系かなと想像してしまうが、実際のところは聞いてもいないし、聞けもしないのでわからない。とにかく顔つきがだいぶ違う系統の人が混ざっている。服装もいわゆるアバヤなどイスラム系の服装をしている人といわゆる洋服とベドウィン系と思われる服装をしている人がいる。ちなみに男はほとんど洋服。イエメンのようにいかにもイスラムの国という様相ではまったくない。

デリゾールを出てから4時間近くたった頃、列車は建物が建て込んでいる地域に入る。車窓から石材加工所が見える。建築材になるのだろう、どでかい石を平板に切り取っている様子がちらりと見えた。

そのうち6階建て程度の同じような外観のアパート群が現れる。やや遠くに1本だけ高層ビルが見える。

11時30分頃、列車はアレッポ駅に到着。遅れもなくほぼ時間通り。シリアにこんな列車が走っているとはここに来る前までは想像していなかったので、なんだか得した気分。

アレッポ駅の駅舎は小さいながらも古い出で立ちでなかなかきれい。

From syria


手元のアレッポの地図には鉄道駅が載っていなかったので、適当に人の流れと車の流れ、方向を示す看板を見ながら安宿街を目指す。

さすがに都会だからかデリゾールのように10m歩けば誰か彼かからハローと言われるようなことはない。でも、子どもたちはぼくを発見するとお互い教えあい、こちらを凝視する。

From syria


公園沿いを南にしばらく歩くと地図の範囲内に入る。この地図がいまいち使いづらく何度か歩きながら見直す。

郵便局の前を通りがかったので、ここで出しそびれていたはがきを出す。

そこから歩いて10分足らずで安宿街に着いた。この安宿街は珍しいことに車の部品屋街と重なっており、ある通りは宿の他にある店はタイヤ屋と名前もどこに使うのかもわからない自動車部品屋ばかり。床面積8畳程度の小さな店がずらずらと並んでいる。

ガイドブックに載っていた安宿に直行。ドミトリーで250シリアポンド(約500円)。受付のにいちゃんは愛想がない。もっと安そうなところはありそうだが、面倒なのでここで決める。時計を見ると12時。

ちょっと一息ついてから荷物を部屋に置き、街に出る。

時計塔に面した通りに小さな食堂があったので、そこで昼飯。8種類ほどの料理がカウンターに鍋に入れらたまま並んでいたので、その中から2種類選ぶ。茄子を炒めたものと牛か羊かの内臓を炒めたもの。どちらも味付けはトマトベース。というか、ここにある料理はどれもトマトベースの味ばかり。これらおかずを頼むときゅうりらしいピクルスとスライスされた生の赤カブ、それに茎に葉が付いた状態のミントと、その上に蓋のようにして平べったく薄いパンが乗った小皿が出てくる。これで100シリアポンド(約200円)。

From syria


食後、同じ通り沿いの商店街を見て回るとプリンのようなものを売っている店があったので、食後のデザートに食らう。1皿15シリアポンド(約30円)。日本にはない食感のる食べ物で、カンテンをとろっとさせたような感じ。味は牛乳カンテンに近いが、なぜか焦げっぽい味がわずかにする。これが不思議。このデザートはシリアでは基本的な甘味のようで、ダマスカスでもデリゾールでも売っていたし、ここでも辺りをうろつけば5~6店舗は同じものを売っている店がある。

腹が膨れたところで旧市街に向かう。

旧市街にたどり着く前に野菜や肉、魚などを売る生鮮食料品専門のスーク(市場、商店街)があったので、そこに立ち寄る。野菜はじゃがいも、人参、きゃべつ、コネギ、赤カブ、タマネギ、香菜、レタス、きゅうり、ズッキーニなどなど。南アフリカと比べると種類は少ないが、それでもいろいろある。目を引いたのがある店で売っていた人参で、色が黒に近い濃く暗い赤色をしていた。

肉屋の軒先にはベロ(舌)?から内臓までがつながったままぶら下げられていて、店先には羊の頭、足、内臓もきれいに陳列されている。羊肉と牛肉を売る店は別々になっているようで、牛肉を売る店の軒先には巨大な肉の塊がぶら下がっていたりする。魚屋は少ない。他にチーズ屋もあり、見た目は木綿豆腐そっくりのチーズや糸こんにゃくのように麺を束ねたような形のチーズなど、数種類のチーズを売っている。

From syria



商店街をカメラを手に歩いていたら、パンケーキのようなものを売っている店のおじさんが声をかけてきて、写真を撮れと言ってくる。そうした写真好きのおじさんがいるかと思いきや別の店でチーズの写真を撮らせてくれないかと頼むとけんもほろろに断られる。

この商店街の入り口や出口(と言ってもどっちがどっちと決まっている訳ではない)付近には農家なのか、路上にブドウの葉と真っ黒い液体が入った500mlのペットボトルだけを並べて売っている人やバケツにソーセージ用らしい腸管を膨らませたものを入れて売っている人もいる。

おもしろいことに、生鮮食料品の商店街の隣の狭い(幅2mほど)通りは金物食器を作る店が10軒ほど並んでおり、見た目は70歳くらいの白髪、白髭のおじさんたちが、カンカンと小気味のいい音を立てながら作業している。それぞれの店は2畳程度しかないから、ほとんど道ばたで作業しているような雰囲気。

そこから旧市街の入り口がある門までは100mほど。その通りの一部には履き物屋が10軒近く並んでおり、履き物用のミシンでがたがたと靴を縫っている。ある店には自分の靴を修理してもらおうと持参して、その出来上がりを待っている客の姿もあり。

旧市街の入り口となっている門の前には靴下や服などをシートに並べ売っているおじさんが10人ほど。ぼくを見ると声をかけてきてどこから来たのかと尋ねてくる。入り口の門(日本語でイメージする門とはちょっと違う)はどでかく、中に入るとそれまでの雰囲気とはまた違う雰囲気になる。幅3m程度の道を挟んで隙間なく店が並んでおり、買い物客がそぞろ歩き、その間を荷車を押すおじさんや少年たちがすり抜けていく。

From syria


これまであちこちの旧市街を見てきたが、ここの旧市街の商店街の特徴と思われるのが鋏(はさみ)屋が数軒あること。鋏だけを売る店が数軒並んでいるのは他では見なかった。ふとヒッタイトからの鉄器の歴史の由縁かとも思うが、実際には服屋や散髪屋のニーズが高いからかとも思う。

旧市街の中心部はアーチ状のアーケード街になっていて、やはり細い道を挟んで小さな店がこれでもかというくらい並んでいる。ある通りはイスラム服ばかりの通りだったり、あるいは香辛料やナッツ類を売る店ばかりだったり、布屋ばかりだったり。石鹸屋ももちろんたくさんあるが、あまり客は入っていない。

専門通りばかりと思いきや小物屋の隣が肉屋だったり、横道に入る角に羊らしい肉がぶらさがっていたりと想定外の展開もある。

From syria


その他、あちこちふらついて印象に残ったのが、子ども向けのおもちゃ屋や子ども用の服だけを売る店がけっこう多いこと。あるおもちゃやには日本でも流行った遊戯王のカードが売られていたりするし、ラジコンなども売られている。ちなみにある店で売っていた子どもの遊び用のバスケットリングのデザインはスラムダンクの流川だった。

From syria


From syria


From syria

0 件のコメント: