2011年1月4日火曜日

[diary]アレッポからハマへ

アレッポからハマへ

2008/11/26(水) 晴れ
[Aleppo→Hama:Syria]

・ATM使えず、両替屋探し
・トルコ行きのバス事前チェック
・バスステーションで警察につかまる
・ハマへ行くバスの車内でー20歳シリア人男子との会話
・巨大な水車
・昼の静けさと夜の明るさ

6時過ぎ起床。同室のドミトリーは4人部屋でうち3人が日本人でもう一人は韓国人。いずれも野郎ばかり。

ベランダに昨日洗濯した靴下を干していたのだが、乾いていない。やっぱり寒いからか?

しばらく廊下(踊場)にあるソファで書き物。そこへ別の部屋の日本人男子旅行者がやってくる。書き物を中断し、しばらくおしゃべり。彼も1年の予定で日本を出てきたらしいが、当初の予定では行かないつもりだったアフリカにこれから行くという。それでちょっとだけアフリカの情報提供。彼はアフリカはここらよりも物価が低いと思っていたよう。また保険に入っていないらしく、しかもここのところ内臓系の痛みに見舞われていたということで、これからのアフリカ行きにちょっと不安を抱いているらしい。見た目20代後半。

8時過ぎ、荷物を整理してすぐにチェックアウトできる状態にし、外に出る。昨日は定休日で開いていなかった民族博物館に行こうと思って外に出たのだが、財布に金がないことを思い出す。なので、まずは銀行及び両替屋探し。ここらは安宿街なのに両替屋の類が少ないのが不便。

ATMも昨日は使えなかった。日が変わればシステムが変わっているかと思い、近くのATMを使ってみるがやはりダメ。

商店が並ぶ時計塔周辺の歩道を歩いていたら「チェンジ」と声をかけてくるおじさんがいたので、1ユーロいくらかと尋ねる。すると1ユーロ=58シリアポンド。国境の銀行と変わらない。銀行よりもレートが良くないなんて使えない闇両替だ。意味がない。商店の少年もやはり声をかけて来て両替しないかというが、レートはおじさんと同じ。ぜんぜんダメ。なので、ちょっと離れた銀行に行ってみる。

店頭の電光掲示板を見ると1ユーロ=60.72。すばらしい。さっきのおじさんよりもはるかにいい。というわけで50ユーロぶん両替したのだが、領収書が出てきてびっくり。手数料を100シリアポンド(約200円)も取っている。結局、手にすることになるシリアポンドはさっきの両替屋のおじさんのレートと同じになる始末。両替ごときでこんなに手数料を取るなんてがめつい銀行だ。というわけで、両替を中止。やっぱり両替しないと伝えると窓口のおじさんはやや憮然とした顔でさっき渡した50ユーロ札を放ってくる。

それから別の銀行及び闇両替屋を探してふらつくが見つからず。しょうがないので昨日、宿の情報ノートで見たドルもおろせるATMに行くことにする。ちょっと離れているらしいので避けていたのだが、近くに両替屋がほとんどないので仕方がない。

鉄道駅へと続く幹線道路を北方面に向けて歩く。すると右手にきれいに整備された幅1mほどある歩行者天国を発見。そこに面して2つの銀行があったので、そこで両替できるかと思い行ってみるが、両替はできないと言われる。ただ近くに両替屋があるからと教えてくれる。

その銀行からは歩いて3分もしないところに両替屋があった。近代的なビルの2階(日本式の数え方で)にその両替屋はあった。窓口で両替を頼むと1ユーロ=60シリアポンド程度で両替してくれる。

そのオフィスから外を眺めたとき、向かいに例のドルも下ろせるというBANK AUDIがあることを発見。手持ちのドルやユーロが少なくなっていたので、ここでドルをおろす。最大で300米ドルしか下ろせなかったが、トルコで同じようにドルやユーロがATMで入手できるというので当面はこれで間に合う。

と、やっと一仕事終わった頃にはすでに時刻は10時半。宿のチェックアウト時間が11時なので、民族博物館は諦め、途中、郵便局に寄ってから宿に戻る。

11時過ぎ、荷物を持ってチェックアウト。ハマ行きのバスが出ているバスステーションに行く前に近くのトルコ行きのバス会社が集まっている場所に行く。これからレバノンに行ってまた戻ってくるときにはシリアには48時間のトランジットビザで入ろうと思っているため、トルコ行きのバスがどのくらいの頻度であり、何時頃出発しているのか、運賃はいくらくらいなのかが知りたかった。

最初に入ったオフィスには英語をしゃべる店員男性がいた。愛想のいいお兄ちゃんで、イスタンブール行きのバスの値段を聞いただけなのに、チャイ(お茶)を飲んでいかないかと言う。なのでご馳走になる。あまり甘くないチャイと棒状のクラッカーを1本ご馳走になる。椅子に座っていたらオフィスにいたイギリス人らしい女性が、どれくらい旅をしているのか、どこに行ってきたのかと聞いてくる。

彼女は見た目50代くらい。南米、アジア、中東などは旅行しているがアフリカは危ないと思ってまだ行っていないという。そのためアフリカは危なくないか、南アフリカの東海岸や西海岸には行ったかというような質問をされる。

完食後、さっさとそのオフィスを後にする。同じ並びにある別のバス会社でもイスタンブール行きのバスの値段を聞いて回る。

聞いて回った範囲ではイスタンブール行きのバスの運賃は50~60米ドル(2500~3000シリアポンド)。13~15時発で翌朝にイスタンブールに到着するらしい。便数はある会社は毎日あり、ある会社は週に2便程度。いずれにしても毎日ある。

レバノンを早朝に出て、その日のうちにバスに乗れるのがベストなのだが、午後早い時間に出るみたいなので、ちょっと難しいかと感じる。

それからハマ行きのバスステーションに向かう。歩き方の地図ではここから歩いていけるところにあるというふうに書いているように思えたのだが、バス乗り場自体が変わったのか、そもそもこの情報(というよりも書き方)が不正確なのか、そこにはバスステーションはなかった。

停まっていたワゴン型のセルビス(乗り合いバン)の運転手にガラージュ(フランス語でバスステーション)に行きたいというと乗れと言う。

大荷物を持ったまま乗り込む。車は住宅街を抜け、どんどん郊外へと進む。途中、通学あるいは帰宅中らしい制服を着た少年二人が乗り込んでくる。2人ともどう見ても12~13歳程度にしか見えないのだが、1人は右手に煙の立っているタバコを持ったまま乗り込んできて、車内でも吸っていた。大人たちはそれを見てもなにも言わないので、ここではタバコは低年齢でも許されているのかと不思議に思う。そういえば昨日同室だった日本人旅行者がまちを歩いていたら、タバコをくれとやはり同じくらいの年の男の子に言われたと言った。

20分ほど乗っていても着かないので、なんだか不信に思い始める。こんなに遠いとは思ってなかったため、違うバスステーションに連れて行かれているように思えて来たのだ。しかし、車はちゃんとバスステーション近くの路上で停車。運賃10シリアポンド(約25円)を払って降りる。

バスステーションは現在建設中のようだった。バスケットコートが4面ほどはかるく作れるくらいの広場を囲むようにバス会社のオフィスが40~50あり、どれもピカピカ。ただ使う方としては使いにくい。どの会社がどこにバスを走らせているのかを示す看板も何もないし、右奥や左奥のオフィスまでは50mほどある。

From syria 2


入り口近くにはそれぞれの会社の客引きらしいおじさんたちがたむろしていて、「ダマスカス?」などと聞いてくる。なので、「ハマ」と答えるとそのオフィスを教えてくれる。

オフィスでパスポートを渡し、運賃100シリアポンド(約200円)を払い、チケットをゲット。ここの窓口の人は座席番号や行き先などを英語(のアルファベット)でチケットに記入してくれた。

バス乗り場に移動し、キオスクで水を買う。1.5リットルで50シリアポンド(約100円)。高い。たいてい50~60円が相場なのだが。

バスは30分後の12時半発。ここのバス乗り場もわかりにくく、ずらっと並んでいる10台程度のバスがそれぞれどこに行くかがわからない。もしかしたらアラビア語で書かれれているのかもしれないけども。

乗り場をふらふらしていたら背の高いにいちゃんがこっちに来いと言う。バス会社の人でハマ行きのバスを教えてくれるのかと思い、ついていってみると案内されたのは乗り場の端にあった交番。完全に私服なので彼が警官だとはわからなかった。

面倒なことにこのにいちゃんもその上司らしいおじさんも英語を解さない。それでなんだかと聞いてくるのだが、何を言っているのかわからず。それで荷物を指さし「オープン」などと言い出す。しょうがないのでウェストポーチとリュックのチャックを開け見せる。携帯を見せると不思議そうな顔をしていじくり出す。頼むから壊さないでくれと、こちらは祈るばかり。

刻々と出発時刻が近づいてくるので、早くしてもらいたかったのだが、上司のおじさんがどっかに言ってしまう。若い方は「Sit down」とぼくに言い、椅子に座るよう促す。

この交番には乗客名簿を持った各バス会社の人が次々とやってくる。若い警官はそれにサインのようなものをして返す。どうもこうした手続きが必要らしい。

おじさん警官は英語ができるバス会社のスタッフを連れて戻ってきた。彼もそんなに流ちょうに英語ができるわけではないため、たまに彼の言葉がわからない。シリアで働いているのかどうか、一人で旅行しているのか、シリアには知り合いがいるのかなどと尋ねてきて、さっき若いのがしたようにまた荷物を見せろと言い出す。やれやれ。アレッポもシリアでは大都市なんだからダマスカスみたいに検査機械を導入しろよな。
というか、怪しい人間がこんなに目立つ格好して来るわけないだろ!

ようやくバスの出発前に解放されるが、英語ができる彼はぼくに「クィック、クィック」などと言う。そんなこと警察に言えってんだ、ボケ!

今回のバスはダマスカスからデリゾールに行くときに乗ったバスとは比べものにならないくらい新品できれいだった。あまりのきれいさに驚く。

12時半過ぎにバスは発車。車内は満席。走り出すとれのごとくプラスチックのコップと飴玉が配られる。正面のテレビでは映画が始まる。

朝飯も昼飯もまだだったので、車内で手持ちのナツメヤシやパンをパクパク食おうかと思っていたが、誰もそうしたことをしている人がいなかったので控える。シリアはちょっとおかしい。

通路側の座席だったので窓の外をじっと見続けることもしにくい。さっきのこともあり、ちょっといらいらしていたら隣に座っていたメガネをかけた色白の若い男が英語で話しかけてくる。

聞くと彼は年齢20歳、大学生。ハマの出身。英語を勉強しており、英語からアラビア語への翻訳やまたその逆をしたりしているらしい。文学青年らしく、ショートストーリーや小説(Novel)をアラビア語や英語で書いたりして投稿もしているよう。そして将来はライターになりたいと言う。

彼は日本と日本人が好きだという。なぜなのかと尋ねると、日本人はあらゆるものを作っているから頭がいい(クレバーだと言った)と言う。そしていつか日本に行ってみたいとも言う。

その他にもあれこれ聞かれる。好きな映画は何か、作家は誰か、音楽は何かなど。これらについてはまったく会話にならず。ぼくは映画はたいして見ないし、監督の名前を覚えたりもしない。作家にしても彼が想定していたのはヘミングウェイやシェークスピアなどいわば欧米文学の古典のような人のようだったが、あいにくぼくはそうした類は読んだことがないので、これも話にならない。歌ともなれば、ぼくは日本語の歌しか基本的に聞かないのでまったく接点なし。

彼はぼくが日本人の作家の本を読み、日本人の歌手の歌ばかりを聴くと聞くと、「You like Japan very much.」と言う。いやいやそういう問題じゃないんだけどと思いつつ、聞き流す。

ここでも日本人のイメージはものづくりに長けている人たちというイメージ。そして、それは物の品質の良さを媒介に好印象につながっている模様。

おもしろいことに彼は自分の英語をどう思うかと尋ねてくる。そう聞かれると褒めない日本人はまずいないわけで、とてもお上手ですよと応える。実際に文法なども正確でぼくより上手。それから日本人にとって英語は簡単なのか難しいのかと尋ねてくる。ぼくは、ほとんどの日本人にとって難しいものだと応えると、彼は自分にとっては簡単だと言う。3年でここまで話せるようになったらしい。アラビア語と英語の距離と日本語と英語の距離がどの程度なのかわからないので、判断できないが、シリアではビジネスなどで一般的に英語を使う環境にあるらしいから敷居が低いのかもしれない。

彼はまた日本でプアな(貧しい?)労働者とはどういう分野の仕事をしている人たちかと聞いてくる。シリアでは市場や路上で稼いでいる人たちは、貧しい労働者だと言う。彼の質問にきれいに応えられるほど、英語が話せないし、日本の状況はおそらくここよりも複雑。日本の場合、収入の多寡はは職種もさることながら、基本的には雇用形態に左右される。そうしたことを説明できるほど英語の単語を知らないので、適当に建設労働者などは安いと言ってしまう。介護職なんかもプア労働者だけど、こっちじゃ介護なんて言ってもわからないだろうな。

その他、日本で4部屋、2つのバスルーム(便所なのか風呂なのかは確認せず)が家を買うとしたらいくらするのか、携帯電話の機体及び通話料はいくらなのか、携帯電話はプリペイドカードを使うのか、日本では砂漠でも携帯電話を使えるのか、日本にはムスリムは何人ぐらいいるのか、モスクは何カ所あるのか、シリアについて知っていることは何か、シリア人をどう思うか、自分のことをどう思うか、などと言ったことを聞かれる。

こうした話の中で印象に残ったのはやはり日本人に対して持っているイメージ。イエメンである英語教師に聞いたときも日本製品と日本人のイメージがつながっていた。日本製品はすぐれている。だから日本人は賢いというイメージ。どの国でもそうだが、やはりその国の人と日本との接点はまずは車であり、そしてカメラであり、音響機器(コンポ)であり、テレビであったりする。

ただそうした人々にとっておそらくもっとも身近な電化製品であろう携帯電話については、ノキア、ソニーエリクソン、モトローラ、サムソンなどの製品ばかりで基本的に日本製品はない。この辺が日本における携帯事情とつながっているようで興味深い。

窓の外は畑が続く。ダマスカスからデリゾールに行くときに見えた景色とはまた違う。ときおりテント生活をしている人たちが見えるのは同じ。

そんなふうにしておしゃべりしているうちにハマに到着。彼はぼくにどこに行きたいのかと尋ねてくる。地図を店ながら町の中心部を指さすと、じゃあタクシーの運転手にその行き先をアラビア語で伝えるからと言ってくれる。が、タクシーではなくセルビスで行くと伝える。

バスを降りてリュックを背負い、そこで彼とお別れ。

ここのバスステーションもきれいに整備されていて驚く。

地図を頼りに歩いてセルビス乗り場に行く。

From syria 2


From syria 2




石鹸を忘れる!

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