2009年2月2日月曜日

[雑記]寒さと言葉には関係がある?---んだ、ダー、タック考

[雑記]寒さと言葉には関係がある?ーんだ、ダー、タック考

2001年にロシアに旅行をしたときから気になっていことがあるのだが、結局、今までそれについてなんら調べたりすることなく時間が経ってしまった。

以下は経験に基づいた想像上の試論であり、帰国後調べることを忘れないためのメモでもある。

1.山形での経験
日本の東北地方では「はい」ではなく、「んだ」という言葉が使われていることは、多くの人が知るところだろう。

「んだ」を使う東北地方としてぼくが具体的にイメージしているのは青森、秋田、岩手、山形、宮城、新潟の各県で、ぼくはそれぞれで実際に使われているのを聞いたことがある。福島でも使っていたような気がするが今ははっきりとはわからない。もちろん同一県内でも使う地域と使わない地域があるだろうし、年齢によっても使用頻度は違うだろう。「んだ」を使う地域がどれくらいあるのかという点はそれとして確認してみたいことの1つ。

それはさておき、山形県のあるまちにしばらく住んでいたとき、南の島(と言っても日本の中じゃけっこう大きいけど)生まれのぼくにとって、「んだ」という言葉は非常にエネルギー効率の良い言葉であるように思えた。なぜか? 理由は単純、寒いからだ。

山形の冬は長い。年によって変動はあるものの、11月半ばから4月半ばくらいまでを冬と言っていいだろう。つまり、半年近くが寒い冬だ。

寒い期間が長ければ、自ずと暮らしのあちこちで工夫をするようになる。現代のように便利な暮らしになる前は、厳しい冬をどう乗り越えるか、あるいは冬自体を乗り越えることができるかといったことは、冬ではない時期の大きな問題だったろう。

そうした寒さを乗り越える様々な暮らしの工夫の中から「んだ」は生まれた、と思う。

「はい」と「いいえ」がそもそもどこで使われていた言葉で、いつから〈標準語(※1)〉になったのかは知らないが、「はい」と比べるとき「んだ」のエネルギー効率の良さが明らかになる。
※1 標準語という呼び方には言いたいことが山ほどあるが、便宜上これを使う。が、違和感を表現するために括弧(〈〉)付きで記載する。

「はい」と「んだ」を言い比べてみると、きっと誰もが「はい」と言うときの方がより多くの息を吐いていることを認めるだろう。もしかしたら腹式呼吸を使っている人はたいしてその違いを感じないかもしれない。しかしそうでなければ、「はい」と「んだ」を交互に何度か言ってみればおそらく多くの人が、それとわかると思う。

ある言葉を発するときにどれだけの量の息を吐くかを調べた人がいるかどうか知らないけど、きっと調査をしてみれば「んだ」よりも「はい」と言うときの方がより多くの息を吐いているという結果が出るだろう。

これまた科学的に証明されているのかは知らないけれども、ある言葉を発するときに、より多くの息を吐くということは、より多くの体内の熱を外に排出していることでもある、と想像する。

だとすれば、「はい」と言わずに「んだ」と言うことは、それだけ体内の熱が外に出ていくことを防いでいるということになるだろう。

つまり、「んだ」は体温を下げることなく効率よく返事をする言葉として、「はい」よりも優れてる。そう言えるのではないか。

2.ロシアの「ダー」、ポーランド、デンマーク、スウェーデンの「タック」
上記のように「んだ」が寒い地域の人々にとって効率的な言葉であるということは、他の寒い地域で使われている基本的な言葉を見ても証明できるように思える。

例えばロシア語。ロシア語で「んだ」は「ダー」である。またポーランド語で「んだ」は「タック」である。デンマークやスウェーデン、ノルウェーなどでも「んだ」という意味ではないものの、「タック」という言葉を使う。こちらの意味は「ありがとう」。これも日常的によく使う言葉という点では、「んだ」に近い。が、使用頻度をこの2つで比べればかなり「ありがとう」の方が低いだろう。なお、アイスランドでも「ありがとう」を意味する言葉として「タック フィリール」という言葉を使っている。

3.おわりに
上記の仮説を証明するには、言葉とそれを発する際に吐く息の連動性(?)を調べなければならないし、また言葉(音)によって消耗するエネルギー量の違いも調べなければならないだろう。

また、世界各地での「んだ」と音が似た「はい」レベル日常用語の分布も調べなければならないだろう。例えばアイヌ語や極寒に生きる人たちの言葉では「んだ」をなんと言うのかを調べなければならない。

あと言語地理学なんてのもありそうだなぁ。

以上、とりあえずのメモはおしまい。

2009年1月23日から24日にかけての深夜に記。
ウズベキスタンのブハラにて。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

新潟県の西側出身のおじさんです。
あちらでは「んだ」は使いませんが、昔から「雪国では口を大きく開けてしゃべると雪が入るので、あまり口を開けないでしゃべる」と、まことしやかに言われていました。確かにボソボソと話すことが多かったようです。「んだ」が省エネ発声法という推論と通じるところがあるように感じます。

私、山形のJくんのところに時々通っていますが、山形弁は聞こえません。

ぶらぷらびと さんのコメント...

新潟県の西側出身のおじさんさま

どうもコメントありがとうございます。
雪が入らないために口をあまり動かさないというのは面白い説ですね。
たしかにそのような面もありそうです。
ただ冬中ずっと吹雪いているわけではないので、
少し説得力にかけるような気がします。

あるいは以前はもっと雪が降る頻度が多かったから
そうなったのかもしれませんが。