08/10/05(日) 曇りときどき雨
[Moyale→Awasa:Ethiopia]
・4時半起き
・当てにならない人たち
・丘を越えて
日本から持ってきた携帯電話のアラーム音が鳴る前に目が覚める。部屋は真っ暗。時間を確認すると朝の4時過ぎ。
エチオピアは虫刺されがひどいと聞いていたから長袖、長ズボンに線香を焚いて寝た。そのおかげか、それともここのベッドには虫がいなかったのか、虫刺されから逃れることができた。
目が覚めてからしばらくベッドの上でごたごたして、それから勢いをつけて起きる。部屋の照明が点かないから懐中電灯で明かりを作り、荷支度を始める。昨日は荷解きはほとんどしていないから準備も早い。それから用を足しにトイレへ。トイレは部屋にはない。向かいの建物にあるのだが、こちらも電灯が点かないので懐中電灯を頼りに歩き、用を足す。
それから同じ時間帯のバスに乗るA君を起こす。A君は隣の部屋にいるのだが、壁が薄いおかげで軽く壁をどんどんと叩いて声をかければ聞こえた。
ナイロビからここまで一緒のトラックに乗ってきたエチオピア人きょうだいも同じバスに乗ると言っていた。昨日の晩飯の時間に、明日は4時半過ぎに部屋の前で合流して一緒にバスターミナルに向かおうと言っていたのだが、時間になっても2人は現れない。エチオピアの長距離バスは朝が早い(4時や5時出発)うえに事前に予約が取れない、というか予約の仕組みがないため、早くバスターミナルに着いたもん勝ちという方式になっていると聞いていた。だから今日、確実に移動するためにも一刻も早くバスターミナルに行きたいのだが、彼らはなかなか来ない。
10分ほど待っていたが、起きている気配もないのでA君と2人で先に行くことにする。地元の人だからどうせ何か考えがあるのでしょう。
まだ夜が明けない暗闇の中、てくてくとやや上りの道を歩いてバスターミナルへ。半そででは寒いくらいの気温だが、長袖のシャツを着て歩いているぶんには心地よい。宿からは歩いて3分ほど。距離にして言えば300mほどか?
バスターミナルに着くとすでにバスも客も出発準備をしていて、ドッドッドという低いエンジン音のまわりでワーワーと人の声が舞っていた。バスは30年位前のタイプのバスで見るからに年季が入っている。これもどこかからの輸入品なのだろうが、どこのものかはわからなかった。
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フロントガラスのところに行き先を書いたボードが置かれているのだが、これがアムハラ文字だけで書かれているのでまったく読めない。知らない文字の世界に入れば、誰もがいわゆる文盲になってしまう。これまでヨーロッパに支配されていたところばかり行っていたので、意味はわからなくても読むことはできた。しかし、ここのアムハラ文字はアラビア文字並みに読めない。まったく文字の形状が違う。
ふと世界の言語数と比べると独自の文字を持っている地域というのは少ないものなのだなと感じる。これまで回った中で言えば、マヤやインカにも独自の文字はあったらしいが、ヨーロッパ人の侵略のお陰でその文字を使える人はいなくなった。そうしたこともあり、今回の旅行で言うといわゆるローマ字以外の文字に出会ったのは、アラビア語についでアムハラ語が2種類目。ぱっと思いつく限りで言うと、そうした独自の文字を今でも使っているところはアジアに多い。日本は言うまでもなく、中国、朝鮮・韓国、ベトナム、タイ、ラオス、インド、それからこれはヨーロッパとの境界になるが、ロシア、グルジア、アルメニアなど。もし豊かさの基準を多様であることにとるなら、ヨーロッパによる世界各地の侵略(特に英語圏の拡大)がどれほど世界を貧しくさせたかが文字の問題からだけでもわかるように思う。
話を戻す。今の問題は世界の文字文化に関することではなく、バスのフロントガラスにある行き先を書いた文字が読めないということだった。こうなると当然聞くしかない。アムハラ語はまったくわからないので、とりあえず英語で首都のアディスアベバに行きたいと近くの人に言うと、あるバスを指差して教えてくれる。
A君はぼくとは違うところへ行くので、ここでお別れ。それぞれ自分が乗るバスのところへ向かう。
さっき教えてもらったバスの近くまで行き、2~3人にこれがアディスアベバ行きのバスであることを確認する。それから客の間をぐるぐるまわってチケットを売っている男に近づき、バスのチケットを買う。アディスアベバまで110ブル(約1300円)。2日かかるし、エチオピア人きょうだいに聞いていた値段とそんなに変わらないので、値引き交渉はせず。
リュックなどの荷物は屋根の上に乗せる。バスのチケット売りとは別に荷物を載せる作業をする男たちがいて、彼らに荷物を渡し、屋根の上に乗せてもらう。もちろん屋根は荷物を載せられるように改造されてあるが、屋上屋はない。荷物の積載作業をしている男にリュックを預ける。すると荷物代を請求される。値段を聞くと10ブル(約120円)もする。1食相当の代金だ。バスの屋根に荷物を載せるだけの仕事でそんなに取るか? しかもバス賃の約1割。周りを見ると、他の人もいくらかカネを渡している。だから払うものなのではあろうが、金額が高いので安くしろと言うが、相手はまったく聞かず。自分で載せる手もあったのだが、盛んに作業員の男たちがバスの屋根を行き来しているから入る余地がない。しょうがないので、まぁ、これもこの人らへのボーナスと思ってカネを払い、荷物を屋根に載せてもらう。
荷物が屋根に載ったのを確認してからバスに乗り込む。外見どおり車内も相当ふるい。内装はすっかりはがれ、座席も木目が磨り減った板そのまま。なんだか木造校舎の雰囲気に似ている。
座席は特に決まっていないようなので、適当に窓際をゲット。あとは出発を待つだけ。
出発時間などはけっこう適当なのかなと思っていたら、意外にもわりと時間を守っていた。6時出発には遅れたけれど30分も待たずに発車。それまでに車内の座席はすっかり埋まってしまう。
バスは舗装されている一本道を走る。丘のような地形のためゆるい坂道を上ったり下ったりを繰り返す。エアコンはもちろんついていないので、空調機能は人力による窓の開閉だけ。出発前には前回だった窓も走り出すと吹き込んでくる風が冷たく、すぐに窓のオープン面積は少なくなる。
あたりはサバンナ的な風景。やっぱり緑が少ない。
走り出してしばらくすると、なぜかバスが止まる。前方を走っていたバスも止まっている。そして乗客がみな降り始める。沿道には小さな集落があって、掘っ立て小屋のような店にはチャイ(ミルクティー)とチャパティ(小麦粉で作った厚手のクレープみたいなの)を作っているおばちゃんが1人いた。
ぼくもバスから降りて状況を観察していると、あのエチオピア人きょうだいを発見。彼らは別のバスに乗っていたようで、英語で挨拶を交わし、何事かと尋ねてみると警察のチェックを待っているのだという。バスは3台ほど止まっており、どのバスの乗客も全員外に出ている。そうして空っぽになったバスの中を征服を着た警官が2~3人でチェックして回っている。何をチェックしているのかはよくわからず。
暇だったので掘っ立て小屋のような店でチャイを一杯とチャパティを1枚買う。これが朝飯。
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結局、警察のチェック待ちに30分ほどかかる。個々人の尋問のようなことはなく、車内のチェックが終わるとみなすぐに車内に戻っていった。
また遠くまで見通せるような丘の波をバスはえっちらおっちら走る。沿道には民家以外の建物を見ることはまずない。
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お昼頃、沿道に店が並ぶ通りでバスは止まる。どうやらこのあたりはこのまちの中心商店街のよう。昼食休憩のようで、バスからみな降りはじめる。ぼくもあれこれ食べたいところだが、バスにトイレはないし、まだまだ移動は続くので昼食は抜き。よって道端をふらふらしながら店を見て回る。そこにはクッキーやコカコーラなどを売っている小さな食品店、雑貨屋、八百屋などが並んでいた。何も食べないのも口さびしいので、クッキーを買うことにする。15枚入りくらいの小さなクッキーは1袋50円程度。味は日本のものとたいして変わらない。ここで面白かったのがユニークな形の木製一輪車だった。こうしたつくりのものを見るのは初めて。
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昼食休憩は30分ほどだった。昼飯が終わるとまたどかっとバスに乗り込む。相変わらず隙間がない。満席状態がつづく。
ときおりバスの中でウトウトしながら、そうでなければ窓を開けて外を眺めながらバスに身を任せる。
気がつくと緑が多い地帯をバスは走っていた。道の両側にこんなに一面の緑を見るのは久しぶり。こんなところもあるんだと思いながら外を眺めていたら、バスがまた止まった。どういう理由かはわからない。何かの店に立ち寄るわけでもなく、ただ止まってしまったようだったから、おそらく故障か何かでの停止らしい。なかなかバスが動かないので、外に出て立ち小便したり、ぶらぶら歩いたりして待つ。
30分かそこらの間、そこで待たされた後に再出発。その後も同じ調子でうとうとしたり大して変化のない景色を眺め続けたり。
日が暮れてもバスは走り続ける。
暗闇を走っていくとまちに着く。そして、そのまちのバスターミナルにバスは入る。アジスアベバ行きのバスだが、ここで今日はおしまいらしい。つまり、このバスに乗っている乗客はみなここでいったん解散し、明日の朝5時に再びバスに集合ということらしい。こうした習慣があることは事前に別の旅行者から聞いていたから、たいしてあわてることもなく受け入れられたが、知らなかったら何がどうなっているのか訳がわからなくなっただろう。
こういう場合、他の国ならば夜もバスは走り続けるのだが、なぜかエチオピアは走らない。しかもバスの中で寝れるか運転手に聞いたところダメとのこと。つまり、宿泊は自前で探し、自腹で確保しなければいけない。長距離バスに乗って宿代を浮かせるというお金を節約するための十八番が使えない。荷物は屋根にあげており、別にそのままでもいいとのことだったのだが、心配なのでおろしてもらう。
同じバスに乗っていたおじさんに近くに宿があるかと尋ねると付いて来いと言う。おじさんとその連れの男性にくっついて歩く。バスターミナル周辺が繁華街のようで、20時を過ぎたこの時間でも開いている店やレストランがちらほらとある。
宿はバスターミナルから左斜めに100m程度でレストラン併設だった。一緒に来たおじさんが宿主に話をしてくれ、部屋を確保してくれる。宿代を聞くと1人部屋1泊25ブル(約300円)だと言う。ちと高いなと思ったが、他に当てもないのでここにする。
部屋を案内してもらうと、なかなか逆の意味で素敵な部屋だった。部屋にあるのはベッドと水の入ったペットボトルと洗面器だけ。洗面器は奥の角に置かれていて何か意味ありげなのだが、かなり汚れているし何に使うのかわからない。トイレやシャワーは別。
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腹が減っていたので荷物を置いたら近くの食料雑貨店に行く。お菓子の類ばかりで食事代わりになるようなものがないのだが、しょうがないので昼と同じようにクッキーを1袋買う。あたりをぷらぷらしていると道端で既製品のクッキーをダンボールに並べて売っている人がいたので、その人からも1袋買う。10枚程度入っている小さなサイズでお値段は1ブル(約12円)。それからペットボトルの水1.5リットルを買う。こちらは8ブル(約100円)。
この通りには50m置き程度に街灯があるのでそこそこ明るい。けれど、道を歩いている人はまばら。車が時折走るからそのエンジン音がやけに響く。
部屋に戻って菓子で晩餐。あとは明日着くであろうアジスアベバの予習をして就寝。
Fin
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