2008年6月12日木曜日

プエルトナタレス着、そしてプンタアレナスへ

08/05/23(金)

・プエルトナタレス着
・プンタアレナスへ

7時頃起床。同室のおじさんの携帯のアラームがなる。まだ外は暗い。

着替えてデッキに出てみると、今朝も月が出ていた。船はちょうどWhite Narrowと呼ばれている島に挟まれた狭い海路を通っているところだった。これまでの中ではおそらく一番狭いところで島まで5mほどしかない。そんなところを通れるということは、見えている島はそれだけとがっているということだろう。

気温は昨日までと対して変わらないが、風がかなり強い。8時を前にゆっくりと明るくなりはじめる。7時半が朝食の時間だったものの、朝日を拝むまでデッキにいる。

8時過ぎ、ようやく太陽に謁見。

それから朝食。前2日と変わらずパンにコーンフレークにスクランブルエッグにヨーグルト、果物。

違ったのは、アンケートがそのときに配られたことくらい。スペイン語と英語で質問が書かれており、ほとんどが5段階評価で答えるようになっている。船の食事はどうだったか、船員の対応は?、映画などの娯楽は? 船室の居心地は? などなど。最後に意見を書く欄があったので、ぼくは挿し絵入りで2段ベッドの下のベッドと上のベッドとの間が狭いと書いてあげた。

食事後、いつものように外のデッキにいる。遠くに雪をかぶった山々が見える。

9時を過ぎた頃、島に点々と民家らしい建物が見え始める。いよいよ目的地のプエルトナタレスに着くらしい。

やがてまちが見えてくる。ちょうどまちの方に太陽があり、またまちは朝靄に煙っていたため、まちはくっきりとは見えず、ちょっと幻想的な雰囲気を醸し出している。

港にはいくつもの船が見え、中には廃船になったような船も見える。桟橋もいくつか見えるが、プエルトモンのようにコンクリートで固められたいかにもそれとわかる港がない。

船はスピードを落とし、船頭の甲板では錨を降ろすための作業が始まる。これまで客も自由に入れた操縦室は立ち入り禁止になる。

やがて狭いコンクリートの桟橋近くで船はエンジンを切る。エンジンをかけたまま操縦して接岸するには、相当な技術が必要だなと素人でもわかるくらい、桟橋は小さい。

エンジンが止まったところで、はてどうやって接岸するのかと見ていると、直径20cmほどはある黄色いロープが船頭と船尾の甲板から海に放り投げられ、それを岸から来たボートの人が受け取り、桟橋や陸地にある金属のロープかけ(固有名がわからず)にかける。

そうやっておいて、船の方で機械か何かを使いロープを巻き、徐々に船を桟橋に近づけていく。近づいていくスピードは、じっとずっと見ていないと動いているのかどうかもわからないくらい微々たるものだった。

これは接岸するのに1時間くらいかかるなと、最初は思っていたが、意外にもその作業はスムーズで30分ほどで無事に接岸する。

観光客はみなデッキに集まり、その様子を見ていたが、プエルトエデンから乗ってきた人たちは一人もその中にはおらず、すでに船を降りる準備をして船尾の出口が開くのを待っていた。

完全に接岸したのを見て、降りるために部屋に戻る。その際、調理室のところでコックのおじさんに挨拶。

リュックを背負って陸に上がる。

陸地だからか少し暖かく感じたが、実際には道ばたの水たまりはかちこちに凍っていたので、やはりそれなりに寒いところのよう。

饒舌だったもう一人の日本人の人と別れ、ぼくはバス乗り場に向かう。

ゆるい坂道を上っていくと両脇にはレストランやホテル、トラベルエージェントのオフィスなどが出てくる。さすがにパタゴニアの観光地の一つだけある。ただ、今はシーズンから外れているためか、ほとんどの店が閉まっている。

教会と中央広場らしいところを通ったところで、今一度バス乗り場を確認。ここはバスターミナルはなく、各会社ごとに乗り場が分かれているため面倒くさい。

人通りの少ない通りを歩いていたおじさんに話しかけ、道を尋ねる。するとおじさんは観光客だったらしく、それらしきことを言って、別の女の人に聞いてくれる。

その人に教えてもらった道を行き、無事にターミナルに到着。客が2人ほどしかないオフィスに入る。壁にこれから向かうプンタアレナス行きのバスの時刻表が貼られていたが、念のため次のバスの発車時刻と料金を聞く。ちょうど1時間半後の13時にバスがあったので、それに乗ることにする。料金は5000ペソ(約1100円)だから予想していたよりも安かった。

リュックをターミナルに預け、まちを散策。そもそも人口が少ないのか、それともそういう時間帯なのか、まちを歩いている人は少ない。観光客向けのレストランや土産物屋はほとんど閉まっている。ただ、冬用のコートやウィンドブレーカーを売っている店は開いているので、防寒用に何か買おうと思えば十分に買いそろえることはできる。中心街はとても小さく30分もあればすべて見て回れるほど。

人が多かったのは食料品店くらいで、中でもパン売場は20人くらいの人が行列を作っていた。ここでもパンは量り売り。昼飯用にフランスパンのようなパンと菓子パン2個を買う。

菓子パンは日本であれば絶対買わないようなケバい色をしており、かなり甘さがきつそうに見えたが、実際に食べてみると表紙ぬけするくらい甘くなかった。見かけ倒し。フランスパンの方はもちもちしてなかなかよろし。

13時前、ターミナルに戻っていると学校が終わったのか、制服を着た子たちがぞろぞろと歩いていた。その子らの中には、そうした食料品店でちょっとしたお菓子を買って食べながら帰っている子もいる。

バスは予定通り13時に出る。客は半分も座席が埋まらないくらい。あっと言う間にまちを出て、あとはずっと放牧地らしい草地を行く。枯れて黄色くなった草地には、ときおり羊や馬、牛などが見える。基本的には羊が中心で馬や牛はほんのたまにしか見ない。また、リャマにそっくりな生き物もちょっとだけいた。

池のような水たまり(?)はほとんど凍っていたり、川にも氷がゆらゆらしているのが見える。

ときおり海が見えるが、とにかくずっと稲藁色の大地が続く。車内ではアメリカ映画。

海岸に沿いに出て、少し走った頃、添乗員が飛行場がどうのと言う。どうも飛行場に行く人がいないか確認したよう。飛行場で降りるという人はいなかったが、バスは飛行場までまわり、誰も降ろさず、また誰も乗せずに走り続ける。

空には雨雲が広がっているおかげで、まだ15時過ぎだというのに暗い。これでは着いてもマゼラン海峡を見ることはできないかもななどと思っていたら、道路脇にPunta Arenasと書いた標識が見える。

空港から20分ほどでまちに入る。ショッピングセンターらしい建物が左手に見え、右手には大学らしき敷地が見える。最悪なことにまちに入ってから雨粒が窓をポツポツと叩きだし、やや強くなる。

16時ころ、プンタアレナスのこのバス会社のターミナルに到着。ちゃんと駐車場には屋根があったので、待合室までは濡れずに入れる。

リュックを受け取り、待合室の椅子にどかっと乗せる。リュックカバーを取り出し、それでリュックを覆い、あと破れてしまったビニール合羽の切れ端で小型リュックとウエストポーチを覆う。

窓口の人に、次の目的地のウシュアイアに行くバスがないか訪ねる。が、この会社では走らせていないらしい。ウシュアイア行きのバスを出している別の会社とそこのオフィスまでの道順を教えてもらい、やれやれと思いながら歩き始める。

時間は16時になったばかりだが、すっかり暗くなってしまった。雨はそれほど強くはないものの、ずっと降り続けている。

中心部にあるバス会社に向けて歩く。道行く人はウィンドブレーカーなどを着ているが、プエルトモンと同じく、やはり傘をさしていない。

あっと言う間に靴は湿る。15分ほどでその会社に着く。窓口のおじさんに、明後日の日曜に出るウシュアイア行きはあるか聞くと、ないと言う。しかも、次のバスは火曜日だと言う。じゃあ、明日出るバスはないか聞くと、別のバス会社が出しているというので、そこを教えてもらう。

また、雨の中、歩き始める。排水路がちゃんと整備されていないのか、歩道と車道の境や交差点付近には水がたまり、何も考えない車は水しぶきをあげて走っていく。

やれやれと思いながら、また別の会社のオフィスに向け、歩く。各社合同のターミナルがないまちに着たときに雨に降られるなんて、ついてないななどとぶつぶつ思いながら歩く。リュックのパッキングのバランスが悪かったのか、左肩に異様に負荷がかかり気持ち悪い。

今度のオフィスはそれとわかりにくい店構えをして、2人位の人に聞いてやっとたどり着く。そこで聞くと、明日のバスはあるが、明後日のバスはないという。そして、明日(土曜日)を逃せばやはり火曜日になると言う。

日曜にバスを出している会社はないか聞くが、全部終わったと言う。どうも冬になり、観光シーズンが終わったから日曜の便は走っていないよう。

出発時刻を聞くと朝の7時と言う。予定では明日一日まちを見て、うまくあれば夜行バスに乗ってウシュアイアまで行こうと思っていたのだが、朝7時となるとまだ真っ暗だから、もし明日のバスに乗るとしたら、明るいときのこのまちを見ることはできない。

迷う。とりあえず明日の便の席が空いていることを確認し、いったん、宿探しをすることにする。

このバス会社は中心のアルマス広場から2区画ほどのところにあって、バスに乗る選択肢を考えれば、近いところに宿を取る方がいいと思い探すが、高級そうなホテルはあってもResidencialといった安宿が見あたらない。

一軒だけResidencialと掲げた宿があったので、そこに行ってみたら、80歳くらいのおじいさんが出てくる。値段を聞くと7000ペソ(約1600円)と言う。5000ペソがぼくの中での上限なので、候補とはなりえるも一旦は出る。

そして、ロンプラを見ながら安宿のある場所へ向かう。途中、ツーリストインフォメーションがあったので、もしやいい物件を教えてもらえるかもしれないと思い、行ってみる。

女性二人がそこにはいて、客は他になし。先にウシュアイア行きのバスについて聞いてみると、いくつかの会社に電話してくれ、時間と料金を確認してくれる。新たな情報としては乗り継ぎでいいなら、月曜にもバスがあるという。リオグランデまで行って、そこで新たにチケットを買ってウシュアイアに行くという形になるという。

どちらが安いか聞くと、やはり明日のダイレクトで行けるバスの方が安いと言う。

どちらのバスに乗るかは安宿次第ということにして、次に宿について聞く。5000ペソ(約1100円)くらいの宿がないか聞くと、あると言って名前と場所を地図に書き込んでくれる。教えてくれた宿はちょうど今行こうとしていた宿と同じだった。


礼を言ってインフォメーションを出る。宿に向かって歩き、無事、看板を発見。だが、入り口は閉まっているし、電気もついていない。ドアをノックしたりして、誰か出てこないかしばらく待っていたのだが、人の気配はがないため、断念する。

近くにはHostalという看板を出している宿が4つくらいあり、それぞれ料金を聞いてまわったが20000ペソとかで、安いところでも7500ペソだった。

肩もだいぶ痛くなっているし、もう着いてから1時間くらいたっていたので宿探しはこれで止めにして、さっき行った中心部のResidencialに泊まることにする。

あの金額では3泊も泊まれないので、明日のバスに乗ることに決定。

宿に着くと、今度はおばあさんが出てきて、部屋を案内してくれる。通りに面した部屋で6畳ほどのスペースにベッドと机があるだけ。シャワーとトイレは廊下にあるが、他に誰か泊まっているふうでもない。

おじいさんたちは同じ建物内の別の部屋の住んでいるようなので、もともと家だったところを宿にしているようなのだが、家というよりも館という方がふさわしい建物で、もとは貴族だったんじゃないか思えるくらい。

言葉ができれば、昔話でも聞いてみたいところだが、あいにくそこまでできるほど、スペイン語も覚えていない。

荷物をおいて、まちに出る。

さすがに10万人以上の人口を抱えているまちらしく、メインストリートには店がずらりと並び、小さなショッピングモールみたいなところもある。

しゃれた喫茶店があり、ネットカフェもちょこちょこあり、日本でもよく見る登山着(防寒着?)のブランド店もある。ウィンドブレーカーなどを売っている店に入ってみると、値段は日本とほとんど変わらず。ゴアテックスのウィンドブレーカーはさすがに3~5万円もする。それでもどの店にも客が入っていて買い物をしていたので、そういったものを買う層はそれなりにいるよう。ちなみに、まちを歩いていても登山に使うようなウィンドブレーカーを着ている人が多い。マゼラン海峡に面した風の強い地域だからそうなるのだろう。

それから、なぜかチリはチョコレート屋が目に付く。なんでチリでチョコレートなのかよくわからないのだが、試しにばら売りしているチョコを買ってみる。味見してみると、なんとも中途半端な味で日本のチョコレートの味から比べると甘みがほとんどない。とてもうまいとは思えない代物なのだが、こういう店が成り立っているということは、この味が一応定着しているということなのだろう。

またアニメの看板を掲げた店もあり、そこに入ってみると10代半ばくらいの男の子や女の子が10人ほどいて、なにやらがやがやとおしゃべりしていた。店主は年輩の女性で、ぼくを見て何を探しているのかというようなことを聞いてくる。

店内は細長く狭い。ショーケースの中には日本のアニメのDVDや本がいくつかあるだけでマンガ本は見あたらなかった。店内の壁には、ここに集っている子たちが書いたらしいドラゴンボールやエヴァンゲリオンなどのアニメのキャラクターの絵が貼られていた。

路上にある屋台は、豆菓子を売る屋台とドーナツのようなものを売る屋台の2種類のみ。プエルトモンにあった串焼き屋などはない。屋台で買い食いしながら安い宿がないか探していたのだが、結局見つからず。

19時近くになったので、宿のおじいさんに聞いた地元の料理が食える店に行き、晩飯。店の人に地元のものを食べたいと言ったら高い料理を2種類ほどすすめられる。一つはプエルトモンにいるときにさんざん食べたクラントで、もう一つはパリジャーダという料理。さすがにこの時期にここで新鮮な貝類は採れないだろうと、パリジャーダを頼む。1000円以上もするのはイタかったが。

ずいぶん待って出てきたのは、肉の盛り合わせだった。羊肉のステーキと偽物ソーセージと半身の鶏肉など。ソーセージは明らかに手抜き。他の肉は塩で焼いただけ。焼き時間はかかっても料理の手間はかからないであろうものが、なぜ1000円以上もするのか不思議だ。肉なんか1kg200~300円で売っているから、原価は2割もしないだろう。

ちょっと期待はずれの料理にあれこれと文句を付けながら、冷えないうちにと食べる。後半はやや疲れる。

食べ終えてまちに出る。メインストリートは相変わらずにぎやか。10代くらいの子が5~6人で固まって歩いていたり、道ばたにたまっておしゃべりしていたりする。小雨がぱらついているのに、傘を差している人はほとんどいない。

大型のスーパーは客でごった返していて、カートに品物を満載にした人たちでレジは長蛇の列ができていた。店が閉まる週末に備えるためであろうが、それにしても買う量がすごい。金額にするとおそらくみな3000~5000円ぶんくらいは買っているだろう。

そのスーパーにATMがあったので、予想外に高かったバス代を補充するためカネをおろす。

そんで21時前には宿に戻る。

部屋に戻ると、すっかり湿ってしまった靴を脱ぎ、インソールを出して、明日の朝までには乾くよう祈る。

ベッドには薄い毛布が2枚ほどあるだけだったので、夜中冷えるんじゃないかと思ったが、まぁ、そのときはそのときだと思い、携帯電話のアラームをセットし、適当に寝る。

Fin

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

>一番狭いところで島まで5mほどしかない。
>見えている島はそれだけとがっているということだろう。

おお、これぞフィヨルド!
U字谷が沈んで出来た谷なので、海岸線は絶壁となり、平野は狭く、海はすぐに深くなるのです。