08/07/08(火)
[Madrid→Sevila:Spain]
・スペイン入国
・マドリッドからバスでセビージャへ
・日暮れの遅いセビージャをぶらり
飛行機の中。物音に目が覚めると、ちょうど朝食を配っているところだった。時計を見ると午前0時50分。なんちゅう時間に飯を配るんだと思いながらも、眠い目をこすりつつ体を起こし、テーブルをおろし、朝飯。飯はパンと菓子パンのみのしょぼい朝食。
眼下には大地が広がっていた。すでに夜明けを迎えていたが、太陽はこれから地上に顔を出そうとしていたところ。これがどこかの島なのかそれともスペインなのかはよくわからず。
飛行機は着陸体制に入る。これで眼下のまちがマドリッドだということがわかる。しかし、ただ農地が見えるばかりであまり首都を感じさせるような建物群は見えない。
ブエノス時間の夜中2時前に無事着陸。拍手が沸く。
飛行機を降りるとバスが来ていて、バスで飛行場の建物の入り口まで送られる。
次の難関は入国審査。入国審査場には同じ飛行機に乗ってきた人だけで、他に審査を待つ人はいない。大勢いれば係員は次々とさばかないといけないからチェックが雑になり、ぼくもすんなり入れるだろうというふうな皮算用をしていたのだが・・・。
しょうがないので、適当に列に並ぶ。すぐに順番が回ってくる。ぼくの担当になったのは若い男性。パスポートを見せると”Japan”と言い、ページをめくりながらこの後、どこに行くのだと聞いてくる。なので、モロッコに船で行くとまず伝え、アルヘシラスからタンジールに行くのだと伝えると”OK”と言って、簡単に入国スタンプを押してくれた。正直、ほっとする。
荷物の受け取り場に行き、リュックを待つ。あたりを見回すと中国人が10人ほど。日本人らしき人は一人もいない。30分ほど待ってリュックが出てくる。
リュックを背負い、まずは飛行場内のインフォメーションとATMを探す。見つけたインフォメーションでマドリッドの地図がないか聞いたら、ここは飛行場に関するインフォメーションであって、ここにはないと言う。しかし、すぐ近くにマドリッドに関するインフォメーションがあり、そちらを指さし、あっちがもうすぐ開くからそちらで聞いてと教えてくれる。飛行場のインフォメーションならとATMの場所を聞くと、すんなり丁寧に教えてくれる。
それにしても、これまでと同じスペイン語だから楽でいい。
ATMでユーロをおろし、それから開いたばかりのインフォメーションで地図をもらう。まちの地図をもらうつもりだったのだが、窓口の若い女性がどこに行きたいのかと聞いてくるので、とりあえずセビージャにバスで行きたいというとそのバスが出ているバスターミナル近くの地下鉄の駅を教えてくれる。
飛行場に地下鉄も乗り込んでいるから、ここから地下鉄に乗り、途中1度だけ乗り換えすれば目的のバスターミナルには行けるとのことだった。ただ、飛行場の地下鉄の駅はぼくが到着したところからはけっこう遠かった。
地下鉄への階段を下りると左手に自動改札、右手に自動券売機が見える。自動券売機は”なんで?”ってつぶやいてしまうくらい図体がでかい。日本の一般的な自動発券機の2体分ちょっとくらいある。切符を発券するだけなのになぜこんなにでかいんか、不思議だ。見るとクレジットカードでも買える仕組みになっているよう。
液晶の画面には3つほど選択肢があり、スペイン語で何やらと書いている。一番やすいのが1回券なのだろうと解釈し、2ユーロ(約320円)出して切符を買う。
自動改札に切符を突っ込むと日本と同じように出てくる。が、降りるときには回転バーをまわすだけで切符は必要はなかった。
地下鉄の車両はなかなかよろし。さすがに先進国という感じで清潔で明るく、落書きなどもない(ロスの地下鉄にはあったけど)。車両は5両ほどで、乗客は多くない。これまでと違うのが車内で本を呼んでいる人の率が高いこと。サンパウロでもブエノスでも地下鉄には何度か乗ったが、それらの限られた乗車経験と比較するとそう感じる。たまたまなのかもしれないが、ぼくが乗った車両の人たちは本なり新聞なりを読んでいる人が半分以上いた。
音楽をイヤホンで聴いている若い人の方からはドラムの音が漏れてくる。しかし、おしゃべりしている人はいないので、とにかく静かだった。
1度乗り換えがあり、6番線に乗り換えバスターミナルを目指す。車内に付いているテレビに次にどこに止まるか駅名が映し出されるのでわかりやすい。
目的の駅で降りるとバスターミナルは通路一本でつながっていた。無事、ターミナルに到着。ターミナルには例のごとくいろんなバス会社の窓口があり、どこの会社がどこへ行くのかよくわからず。そのためターミナル内にあるインフォメーションでセビージャに行きたいと伝えると後ろを指さし、早口で何やら言われる。この窓口のおねえさんがまったくもって愛想のない人で、椅子の背もたれにもたれたままで受け答えするから非常に感じが悪い。
言われた会社の窓口に並ぶ。自分の順番が来て、窓口のおじさんに行き先を告げようとすると、そのおじさんは隣の窓口で何やら抗議らしきことをしていた客(おじさん)に横から口を出し、二人で口論を始める。やれやれ。
口論は一方的に打ち切る形で終わる。窓口のおじさんにはセビージャに今晩行きたいと伝え、夜中12時のバスのチケットを購入。18.65ユーロ(約3000円)。移動時間(約7時間)を考えるとアルゼンチンやブラジルよりも安い。
それから荷物を預けようとコインロッカーを探すがこれが見あたらず。しょうがないので、さっきのインフォメーションに行って聞く。例のごとく態度は横柄。
1つ下の階にあるというので、行って見るがよくわからない。なので、近くにいたバス会社のおやじに声をかけたらインフォメーションは上だと言って、まったく人の話を聞こうとしない。中南米では考えられない態度。クソオヤジが!せめて話くらい聞け、といらいらしながら別の人を捜す。
地下鉄の乗り場の方にあるのかと思い、そちらに行くが見あたらない。地下鉄の所にもインフォメーションがあったので、そこで聞くとやはりさっきのところだと言う。また戻って探すとバックのマークを見つけ、そのマークの案内をたどっていくと、そこに預かり所があった。値段表を見ると1日預けると10ユーロほどもするとあった(直接確認していないため違うかも?と後から思う)ので、マドリッドを見る予定は変更。すぐにセビージャに行くことにする。
バス会社の窓口に行き、次のバスに変更してもらう。さっきのおじさんとは違う若い女の人のところで手続きをしてもらったのだが、これがまたインフォメーションと同じように態度が横柄なのだった。
30分後の10時発のバスがとれたので、朝飯代わりにターミナル内でパンと水を買う。水は1.5リットルが1.5ユーロ。パンはいわゆるスペイン風オムレツ(ジャガイモをつぶしたものと卵で作ったやつ)を挟んだものでこれが3.5ユーロ(560円)。量はあるものの高い。
1つ下のバスの発着所に降り、そこでバスを待つ。発着所にはテレビ式の電光掲示板があり、そこに何時発のどこ行きのバスは何番乗り場に入るというのが表示されている。
乗り場は40ほどあり、バスを待っている客も多かった。発車予定の10分ほど前になってバスが入ってくる。
驚いたのが、荷物を客が自分で積み込むこと。バスが停車して、腹の部分の荷物入れのドアが開くと、そこにみんな並び、めいめい荷物をそこに積み込んでいた。
バスは時間通りに発車。長い地下道を出るとすぐに高速道路に出て、信号で止まることなく走り続ける。
郊外に出ると畑が広がっており、人が住んでいるような集落は見当たらない。
そしてとにかく森がない。山らしい山もない。丘のようなところはあるが、そういったところも畑として使われていたり、あるいは植林地になっていたりする。
畑はブドウ畑やみかん畑、オリーブ畑などが目に付く。
すぐに眠くなりひたすら寝る。たまに目が覚めても景色に変わりはない。バスの中の電光掲示板には外の気温が表示されており、さっきから36という数字が表示されている。
14時頃、バスはパーキングエリアのようなところに止まり、昼食休憩。外に出てみると、確かに日差しは強烈だったが、乾燥しているのだろう、あまり暑いとは感じない。あたりは畑ばかり。
さっきパンを食べたばかりだし、料理を見ても5ユーロ以上のものばかりなので、ここで食事はせず。
30分ほど休憩して、またバスに乗り込む。メロンの切り身を買ったおじさんがそれを車内に持ち込もうとしたところ、運転手の40代くらいの男にメロンは外で食べてから乗り込むよう言われる。バスの中にメロンも持ち込めないとは、たいした国だ。
おじさんは不服そうな顔をしていたが、駐車場で食べきり、皮をポイと投げ捨て乗り込んでくる。そのおじさんはアラブ系の顔立ちをしていて、イスラム教徒なのかある時間になったとき、バスの中でお経を読むような声をずっと出していた。ぼくの座席よりも後ろに座っていたので、コーランを読んでいるのかどうかはわからず。
再びバスは畑の中を走る。黄色や茶色っぽいものがたくさん植わった間を走っていくので、何かと思ってよく見てみると、それはひまわりだった。背丈は低い。
すでに枯れ始めていたので、一面黄色というわけではなかったが、数ヘクタールにもわたってひまわりが植えられていた。バイオエタノールに使うのか、それとも食用なのか気になるところだ。
バスは相変わらずなだらかな丘の間を走る。セビリアまであと約140km。
15時半頃、Ecijaというところに停車。外から見る限りなかなか大きなまちだった。
またすっかり寝ていて、目が覚めたらバスターミナルに入ろうとしていた。ようやくセビージャに到着。マドリッドから約7時間。17時前だった。
バスの発着所から階段を上ってバス会社の窓口が並ぶ出入り口に行く。そこでグラナダ行きのバスを聞く。1日2本ほどしかなく、料金はマドリッドからと同じ約19ユーロ。
ターミナル内にはツーリストインフォメーションはなく、バスのインフォメーションのみ。そこの人にツーリストインフォメーションが近くにないか聞くと、表の通りをまっすぐ歩いて3分ほどのところにあると言う。
外にでる。まず驚いたのが太陽の位置。もう夕方だというのにまだ見上げられる位置にある。日本の感覚で言えば14時くらい。まだ当分日は落ちそうにない。これだったらもう少し遅いバスで来ても十分だった。
歩道の隣には自転車道があり、そこを颯爽とチャリに乗った人たちが駆けていく。半袖のTシャツの上に長袖のシャツを着ていたぼくは、歩いているうちに汗がにじみ出てくるが、噴き出すほどにはならず。雲一つない青空は気持ちいいが、街角の温度計は40度を示していたには閉口する。
インフォメーションに着く前にHostalと書いた看板をあげていたところがあったので、そこに行って値段を聞いてみる。40ユーロとのことで当然却下。
そこから5分ほどでインフォメーションに到着。ユースホステルを探しているとカウンターのおじさんに言うと、その住所などが書かれた紙と市内の地図を取り出し、位置を教えてくれる。ちょっと遠いようで、34番のバスに乗って行くよう言われ、その乗り場も教えてくれる。
インフォメーションをでたとき、ふと歩道に貸し自転車があることに気づく。セビージャのマーク入りの自転車が自動駐輪機(?)に止められており、端の方に貸し出しするための機械がある。ATMのような機械で、いくつかメニューがあり、ボタンを押すと画面が切り替わった。スペイン語以外でも英語とフランス語に対応していたので、英語バージョンにして、このシステムについての説明を読むと、これを使うには1週間とか1年の会員料みたいなものを払い、1週間の会員なら15分いくらといった仕組みになっているようだった。
手続きが簡単なら使ってみようかと思ったのだが、ここには1日しかいないし、高くつきそうだったためやめる。
コロンブスらが船を乗り出していったという川沿いの通りを歩き、バス停のあるTeatro lope de vegaを目指す。途中、シティツアーのバス乗り場があり、これからまだバスがでるようだった。
20分ほど歩いてようやく到着。バス停のベンチに座り込み、水を飲む。しばらくして目的のバスがくる。運転手にユースホステルの住所が書かれた紙を見せ、そこでおろしてくれるよう頼むと愛想よく了解してくれた。運賃はカード式もあったが、現金で前払いも可。運転手に1.1ユーロ(約160円)払うとチケットをくれる。バスは低床だから乗りやすく、通路もわりかし広いのでリュックを背負っている者にとっては助かる。
5つ目くらいのバス停に着いたとき、運転手が声をかけてくれる。バスを降りたものの、それらしい建物がないので、近くを歩いていたおじさんにスペイン語で聞くと、建物を指さし、これがそれだと教えてくれる。今、建物の裏手にいるので、ぐるっと回って反対側の入り口に行かないと入れないと教えてくれる。
反対側にまわると確かにユースホステルのマークがあった。なにかの研修所のような白い四角い建物であまり宿という感じがしない。
入り口すぐの受付で泊まれるか聞くと、予約をしてあるか聞かれたが、部屋は空いているとのことで無事チェックインできる。料金は1泊20ユーロ(約3200円)。朝食付きというから許容範囲。
部屋はベッドが川の字に3つ並んでおり、うっすらと冷房が付いていた。貴重品ボックスがないのがいまいち。ベッドの上にリュックを置くと、水をがぶ飲みする。けっこう喉が乾く。これでマドリッドで買った水1.5リットルをすべて飲み干してしまった。
さっそく外にでる。近くのバス乗り場に行くとネット屋があったので、そこに入る。そこはネット専業ではなく、コピーや印刷業などもやっているところで、ネットを使いたいというとまずカードを買えと言われる。しかもカードは買い取りでカード代だけで1ユーロもするという。ネット代は1時間2ユーロ(約320円)するというので、2ユーロ払って30分だけすることに。当然、日本語は読めず書けず。モロッコ情報とグラナダ情報を探す。
それから近所のスーパーで水を新たに購入。2リットルで0.6ユーロ。安い! マドリッドのバスターミナルの店が異常に高かったことに今頃気づく。
バスを待つ間、ちょっとふらついてみると中国料理屋を発見。今は営業時間外だったが、平日の昼間には7ユーロ(約1000円)で食べ放題をしているらしい。
バスに乗って中心部へ向かう。宿に向かうときはわりと遠く感じたのに、こうして逆に向かっているとえらく近いことがわかった。少なくとも最初に着いたバスターミナルからさっき乗ったバスの停留所までの距離よりも近い。
時間は18時をすぎていたが、まだまだ昼のような明るさ。店もそこそこ開いているし、歩いている人たちや自転車に乗っている人も多い。
ここに来たのは中南米に関する文書を保管しているというArchivo de Indiasに行くためだったが、まだ閉館中(数年前から閉館中)とのことで目的は達成できず。しょうがないので中心部をふらつく。
まちなかには車は乗り込めないようになっているが、路面電車が中心部まで乗り込んでいる。カテドラルがあり、広場があり、数百年の歴史がある大学がありと、まったくのヨーロッパの都市だ。などと、当たり前のことを思う。
暑いのでコーンに乗っけるタイプのアイスを買ってみると値段は1.7ユーロ(約300円)。味はいいんだけど、このユーロ高ではすべてが高く感じる。晩飯をどっかの食堂で食べようかと思っていたが、だいたいどこも10ユーロほどはするのであきらめる。
開いているスーパーに入ってみて気づくのが、中南米と違ってレストランなどの料理と比べてお菓子が安いこと。中南米では屋台などで100円とか200円で食事ができる一方で、例えばポテトチップはそれと同じか、それよりも高い値段で売られていた。だから、スペインと、あるいは日本とお菓子の値段はそう変わらない。中南米を回って思ったが、やはりお菓子(きれいにパッケージされているものに限る)も工業製品なのだ。自前の工場で大量生産し、それを買うことのできる消費者がたくさんいなければ、お菓子と言えども安くない。そんなある意味当たり前のことを思い知る。
スペインのガイドブックは持っていなかったが、さっきインフォメーションでもらった地図を見ながらぶらぶらすると、地図通り、セビージャのまちは碁盤状には整理されていない。とにかくず、なんだかくねくねした道が多い。先が見通せない道が多い。
それはそれでおもしろくてよいのだが、露店や屋台などはないから、いまいち歩いていても何かうまいものにぶつかりそうな期待感がない。非常に静かで落ち着いていて、整理されていて、退屈なのだ。
もし、ぼくが初めての外国旅行でここを訪れたなら、きっと印象はまったく違っただろう。実際、1998年に初めてヨーロッパに来たとき(そのときはドイツのフライブルク:Freiburg=ドイツの環境都市と呼ばれているまちがメインだった)は、その街の佇まいというか、醸し出される雰囲気というか、そういうものに驚いたものだ。こんなところが本当に地球上に、同時代にあるのだ、とまで思った。日本の都市と比べて統一観があり、穏やかであり、滑らかであった。
ここと同じく、中心街への車の乗り入れは禁止されており、枕木代わりに路面が緑化されたちんちん電車が市街地を走り、石畳は今も昔の様式のまま修復され、列車の駅には改札もなく、自転車と一緒に乗り込むことができた。
そんなまちを現実に見て、驚いたものだったが、なんだか今はそういう感覚がなくなってしまった。中南米の都市という都市が、ヨーロッパ調だったこともあるだろうし、一度見たら飽きてしまう自分の性分もあるかもしれない。
セビージャの中心部は、周辺部から比べれば人は多いとは言え、人口密度は低く、人とぶつかるようなこともない。
退屈なまちだと思いながらも結局日暮れまで歩き続け、宿に戻ったのは22時半だった。ちなみに日が暮れたのは21時半頃だった。
部屋の鍵を開け、ドアを開けると中にパンツ一丁のおじさんがいて驚く。もう一人若い男も上半身は裸。冷房はかかっているものの、ほとんどきいていない。
シャワーを浴びて寝るが、夜中何度か暑くて目が覚める。
Fin
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