2008年5月26日月曜日

サンペドロからアントファガスタへ

08/05/13(火)

同室のスペイン人女3人組がごそごそしている音で目覚める。時計を見ると四時前。彼女らはこれから出かけるらしい。

トイレに行くために部屋を出ると外(部屋の外は中庭になっている)はずいぶん冷えていた。多分10℃以下。

再び寝る。次に目が覚めたのは7時半前。うまく目が覚めれば、7時半発のアントファガスタ行きのバスに乗ろうかと思っていたのだが、これでは間に合わない。確か次のバスが9時半くらいだったから、それまで荷物の整理と、あと両替をしないといけない。宿代を払うと、残りのお金ではバス代が払えないから。

リュックの奥に仕舞いこんでいたアフリカのガイドブックを取り出しやすいところに移動するなど、荷造りをし直す。

8時半過ぎ、近くにあるTurBusというバス会社に行き、アントファガスタ行きのバスの時刻表を確認する。すると、7時半の次は8時50分発で、その次は午後の2時だった。午後2時発のバスは夜7時にアントファガスタに着くよう。宿のチェックアウト時間は12時だから昼までのんびりするというのも一つの手だが、なんと言ってもここは小さくきれいにまとまっている観光地、半日いてもたいして面白くない。

なので、直通バスではなく、どこかで乗り換えて行く方法を採ることにする。宿により近いところにバス会社Frontera del Norteのチケット売場があったので、そちらに行く。商店がバスのチケット売場も兼ねているところで、ぼくがその店に入ると白髪のおばあちゃんと店員のおばちゃんがおしゃべりをしていた。

ぼくは店員のおばちゃんに話しかけたかったが、おばあちゃんは話すのをやめない。店員のおばちゃんの方から、こっちに話を降ってくれたので、アントファガスタに行く途中のまちカラマ(Calama)に行くバスのチケットの値段を聞く。値段は1700ペソ。1700ペソなら両替しなくても払えるし、次のバスは9時半発だから十分間に合う。チケット購入。座席はどこがいいかと聞かれて適当に後ろの方を選ぶ。

宿に戻り、荷物をとって宿代5000ペソ(約1400円)を払い、チェックアウト。チャオと言って宿を出る。

バスは9時半に店の前に来た。リュックを預け、乗り込む。客はぜんぶで20人ほど。車体はメルセデスベンツだが、窓は汚れているし、背もたれは勝手に倒れるし、とけっこう年季が入っている。窓が開かないのが難だが、だからといってエアコンは付かない。その代わり、天井の窓を開け、そこから風を入れている。

1分も立たないうちに、外の景色は赤茶色の土漠。まだ砂漠にはなっていない。サンペドロのまちなかは未舗装だったのに、まちを一歩出るときれいに舗装されたアスファルトの道に変わる。白い車線もきっちり引かれている。振動もなく、快調にバスは走る。

外の景色はずっと土漠だから、そのうち飽きて寝てしまう。

そして気が付くと、まちに入ろうとしているところだった。1階立てのコンクリートづくりの家家が立ち並ぶ通りに入る。ボリビアやペルーでよく見た日干し煉瓦の家はほとんどないようだ。

まちに入って10分ほどで、このバス会社のターミナルに到着。バスを降りると、運転手がリュックを運んで来てくれていた。運転手にアントファガスタ行きのバスがどこから出ているか聞き、教えてもらった方向に歩く。

このまちもそこそこきれいで静かだ。コレクティボは走っていないし、道ばたで物を売っている人もいない。真っ黒な黒煙を上げて走る車もないし、クラクションも聞こえない。

日差しの割には空気はひんやりとしていて、ボリビアでの格好と同じ格好をしていても暑く感じない。

目的のバス会社のところに途中で銀行を見つけたので、そこで両替しようと立ち寄ったが、両替はしていないと言われる。CASA DE CAMBIO(両替所)でないとできないと言われる。銀行で両替をしていないなんて、旅の中では初めて。しかもどこに両替所があるか聞いたら近くにはないと、銀行の窓口のにいちゃんは言う。なんとも面倒くさい。バス会社共同のバスターミナルがない点といい、両替が銀行でできない点といい、なんだかチリは旅行するには面倒そうな国だ。

15分ほどでバス会社が集まっているところに着く。4~5社のバス会社が半径30mほどのところに集まっていた。適当に行ってみると最初の3社ではアントファガスタ行きのバスはない、もしくは今日はもうないという対応。これではここに一泊することになりそうだと思っていたところ、ある会社の人がTur Busから出ているというので、そちらに行く。

客の並んでいない窓口に行くと、そこの女性はチケットについてはそっちだからと人が並んで入る窓口を指さす。しょうがないので、そちらの列に並ぶ。見ていると、彼女の窓口には客はひとりも来ない。チケットの発券なんて、パソコンの画面を見て、キーボードを押すだけなんやからあんたもできるだろうと思うのだが、一人何もせずに窓口に座ったまま。その後、やってくる客を案内するつもりなのか、客が並ぶ列の後方に何をするともなく立つ。

ちなみにこの建物内には時刻表も運賃表も張り出されていないから、それを知るためだけに並ばないといけない。これがまた急いでいる人間にとってはいらだたしい。一枚プリントアウトして張れば、列に並ぶ人も減るだろうに。ちなみに時刻表や運賃表がないのは各社共通。なぜそんな簡単なこともしないのか、不思議だ。

15分ほど並んでやっと自分の番になる。アントファガスタ行きのバスは12時発、12時半発、13時発などがあった。料金は4300ペソ。手元にあるペソで払える金額だったらと期待していたが、ぜんぜん足りなかった。米ドルで払えるか聞いたらダメという。じゃあ、予約だけとお願いしたら、機械が言うことを聞かないようで予約もできず。

窓口の女性は、どうせならTur Busのターミナルでチケットを買った方がいいなどと言う。理由はバスがそこから発車するかららしい。てっきりぼくはここから乗れるもんだと思っていたのに、また移動しないといけないと知り、ややがっくり。彼女がTur Busのターミナルの場所を知っているかと聞いてくるので、知らないと言うと、彼女は紙に通り名とターミナル名を書いてくれる。しかし、筆記体気味に書かれた文字は、”r”なのか”v”なのか、”c”なのか”o”なのか、”a”なのか判読が難しい。

ぼくはそこを後にして、彼女が書いた通りを探して歩き出す。途中、銀行があったので、試しに両替ができるか入ってみる。すると、ここは両替ができるとのことだった。どうも銀行によってできるところとできないところがあるらしい。

店内に入ると長蛇の列ができていたので、ゲッと思ったが、両替はそれとは別の列だった。3人ほどしか並んでいなかったので、すぐに自分の順番がまわってくる。20米ドルぶん両替する。これで昨日とあわせてすでに40米ドル両替した。ボリビアでは40米ドル両替すれば1週間は使えたのに・・・。やっぱり物価がぜんぜん違う。

それから交差点で、書いてもらった紙を見せ、ターミナルの場所を通りがかりのおばさんに聞く。すると、おばさんはあっちと言って、今、来たところを指さす。違うんだけどと思いながらも、まぁ、チケットだけ買っておくかとさっき行った窓口まで戻って、チケットを買う。例の女性はやっぱり突っ立ったまんま。

13時発のチケットを買う。チケットは日本でいうレシートみたいなもので、なんだかチケットとしての威厳がない。確認したが、やはりここからはバスには乗れないとのこと。チケットを売ってるんだから、ここにも寄れよな・・・。

人に聞いてもあまり当てにならないようなので、ガイドブックを取り出し、場所を確認。ターミナルそのものは地図外のようだったが、通りの位置はわかった。

歩行者天国になっている通りを歩き、目的の通りを目指す。道ばたにあるキオスクでは多種多様な雑誌が売ってあり、ある一軒ではマンガ本(電影少女)も売っていた。キオスクでアニメやマンガ関係の雑誌を売っているのはペルーのリマなどで見たけれど、マンガ本自体が売られているのを見たのは初めて。

ちょうど下校時間だったらしく、制服を着た10代の子らがうじゃうじゃ歩いている。あまり意識して見ていたわけではないからはっきり言えないが、ボリビアやペルーなどと比べると、化粧してる女の子が多いように思う。だいたいどの子も目の周りを黒く塗って、目を強調したメイクをしているが、みんな同じようにしているから、外国人のぼくから見ると、どの子も同じような顔に見えてしまう。

ここはヨーロッパ調の建物などはない。まちの雰囲気はアメリカに似ている。

10分ほどで目的の通りに着いたが、そこからが長かった。結局歩いたのは30分ほどだったが、リュックが重いから、途中、休憩をせずにはいられなかった。歩きながら、東京の私鉄や地下鉄と同じようなことしやがって、もうちょっとエクアドルやボリビアを見習えよな、ということばかり考えていた。

ターミナルに着いたのは12時40分ごろ。バスはすでに駐車場に入っている。偉いのはバスのフロントガラスの上が電光掲示板になっており、そこに何時発のどこ行きという案内が流れていること。これだったら、バスを間違えずに難なく乗ることができる。

乗車場にあるベンチで休んでいると、5分ほどで乗車が始まった。リュックを預け、バスに乗り込む。

バスは13時にきっちりと発車。今度のバスは窓ガラスもきれいで背もたれも自分の都合で動かせる。

バスが走り出すとすぐに車内のテレビで映画が始まる。どこかで見た覚えのある映画だなと思っていたら、シンドラーのリストだった。

これまでバスの中で流れる映画と言えば、アクション映画ばかりだったので、シンドラーのリストのような映画を流すとは意外だった。

外はやっぱり土漠・砂漠だから、多くの客がテレビに見入っている。2003年の2月の終わりだったか、ポーランドのクラクフやオシヴィエンチム(アウシュビッツ)に行ったときに見た風景・光景が思い出される。そして、ウユニで一緒だったイスラエル人たち(特に彼/彼女らの祖父母)はどんな思いで、この映画を見るのだろうとも。

通路を挟んでぼくの左前に座っている30代くらいの男性は、自分のノートパソコンを使って別の映画を見ているようだった。ノートパソコンを持った人がいるというだけでも、チリの経済力の片鱗がわかる。物価からしても、たぶんメキシコと同じくらいだろう。

バスは相変わらずきれいに舗装された道を走る。ときおり線路を横断するために一時停車することもあったが、それ以外は停まることもなく、土漠の中を走り続ける。

やがて道ばたに道路標識や建物が多くなる。そして、下り坂になると目の前にまちが見え、その向こうには青い太平洋が見えた。映画はドイツの敗戦の報を聞くシーンになり、こちらもいよいよ終わりに近づいていた。

アントファガスタの住宅街らしきところは、壁という壁に落書きがされていた。アート系の絵もあるが、ただスプレーをぶっぱなしてみたというようなものもある。

チリに入っての印象の一つがこの落書きの多さ。スプレーで落書きするにもスプレーを買うカネがいるから、これもまたチリの経済力を反映しているとも言えるのかもしれない。

まちに入ると10分ほどでこの会社のターミナルに着く。バスから降り、リュックを受け取り、ガイドブックで目的の宿の位置を確認する。

太平洋に近いまちだから30℃はあるかと思っていたが、逆に涼しいくらいだった。ターミナルを出たところには菓子などを売っている露店や段ボールにパンを詰めて売っているおばさんがいる。だが、ボリビアやペルー、エクアドルのように、道ばたで火を使ったものを売っていたり、ゆでたじゃがいもやトウキビを売っている人はいない。

ここもどちらかというとアメリカっぽいまち。久しぶりに大型スーパーを見る。

目的の宿に着く。Residenciaという言葉が頭につくこの宿は、ポトシで泊まった宿と同じように作りが長屋っぽい。ずっとここに住んでるんじゃないかというような人もいる。

部屋があまり開いていないようで、主らしいおばさんは従業員らしい女の人に、あの部屋は空いているかこの部屋は空いているかと聞く。そして、端の部屋に案内される。

2段ベッドが2つにふつうのベッドが1つという部屋で鍵は自前の南京錠が使える。これで5000ペソ(約1400円)らしい。

荷物を置いて、まずはサンティアゴ行きのバスの時間と運賃を調べにバス会社巡り。会社間でも4米ドルくらい値段が違う。

それから歩行者天国や人通りの多い通りを歩いてまわる。ここの高校生くらいの女の子たちも化粧をしている子が多い。例のように目の周りを黒く塗っている。男どもも整髪剤を付けてピンピンさせているのが多い。あと肩まで髪を伸ばしている男も。

メルカド(中央市場)に行ってみたが、規模はとても小さく、まちの飾り物程度の感じだった。食堂が10軒ほどと肉屋や八百屋がやはり10軒に足りないほどずつあるだけ。食堂は1500ペソ(約500円)の定食らしきものが多い。さすがに太平洋に面していることもあり、魚専門の食堂もあり。

大型のスーパーマーケット(スペイン語ではスーパーメルカド)は4軒ほどあり、うち一軒はずいぶん凝ったつくりの高級スーパーのようだった。スーパーの中を見て回る。品ぞろえもやはりメキシコと同じ感じ。ボリビアでは、スーパーマーケットという業態の店は、回った限りでは見なかったし、ペルーでもあまり見かけなかった。

パン売場にはけっこうな人だかりができていて、値段を見てみると700ペソ(約200円)などと書かれている。みんなビニール袋に20個くらい詰めているので、200円もするパンをこんなによく買えるなと驚いたのだが、よく見てみると700というのは1個ではなく、kgあたりの値段だった。

他のスーパーやパン屋に行ってもパンは計り売りをしていて、値札にはいずれもkgあたりと書かれていた。パンを量り売りしているのも、今回の旅では初めて見たような気がする。

それからチリと言えばなんと言ってもワイン。種類が豊富で、安い物は720mlで1000ペソ(約300円)、高くても千円はしない。小さなボトルだともっと安いのもある。

インターネット屋と電話屋もそこここにある。ネット屋はだいたい1時間400ペソ(約150円)。ボリビアと比べれば倍以上。ガイドブックでは1時間1000ペソとあったが、競争の結果だろうその半額になっている。

コロン広場のまわりには銀行がずらずらと立ち並んでおり、ここがチリの経済的な中心地の一つであることがわかる。

日が暮れる手前までまちをプラプラする。その後は宿に戻る。

宿に戻るとよぼよぼの白髪のおばあちゃんがドアのノックし、部屋を移るように言う。この部屋は5人用だから、別の部屋に移れとのこと。案内された部屋はベッドが二つある部屋で、天井の蛍光灯は点かない。

おばあちゃんがデスク灯(固有名が出てこない?)を
代わりに用意してくれたのだが、使えるコンセントが1カ所しかないので、これではカメラのバッテリーの充電ができない。

やれやれと思いながら、充電は明日の朝にすることにして、さっさと寝ることにする。

Fin

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