2008年5月26日月曜日

船のチケット、アンクーをぶらり

08/05/19(月)

・少し晴れ
・ハンバーガー
・チケットの手配
・チロエ島のアンクー

7時頃、目が覚める。部屋の天窓(プラスチックのトタンだけど)からはわずかに光が射している。雨音はしない。

着替えて外に出る。バスターミナル前の通りを挟んで向かい側で揚げ物をしているおじさんがいたので、そこで朝飯代わりに揚げ物を買う。揚げていたのはEmpanadaというもので、チリの国民食とも言うべきパンの一種。パイ生地の中に挽き肉などを炒めたものや海鮮を炒めたものが入っている。ぼくはマリスコスの方を買う。

それからターミナル周辺でサンドイッチを売っていたおばさんからサンドイッチを買う。具が違うサンドイッチが数種類あり、適当に頼むと出てきたのは豚の川とバラ肉(かな)のサンドだった。日本のような形はしておらず、ハンバーガーと同じスタイル。固めのパサパサしたパンに肉と少量のトマトなどが挟まれている。一つで600ペソ(約200円)だからそれほど安くはない。

おばさんはコーヒーも売っており、買う人はだいたいコーヒーとのセットで買うよう。コーヒーはもちろんインスタントコーヒー。発泡スチロール製のコップにコーヒーの粉を入れ、持参しているポットのお湯を入れて完成というわけだ。

ハンバーガーを食べながら船会社のNavimag社のオフィスに向かう。昨日も歩いた湾岸沿いの歩道からは、昨日は雲に隠れて見えなかった山々や対岸の景色がよく見える。

10分ほどでNavimag社に到着。9時前だったため、まだオフィスは開いていなかった。しばらく外で待つ。昨日はそれほど寒いとは感じなかったが、今日は天気がいいこともあってか、風が冷たい。手を外に出しているとアッという間にかじかんでくる。

9時をちょっと過ぎた頃、車に乗ってオフィスの女性が到着。外套を来たまま窓口に座り、仕事を始める。ぼくより先に一人おじさんが来ていたので、ぼくはさらにしばらく待つ。

おじさんの用件が終わってから、こちらの順番になり、トラベラーズチェックが使えるか確認してから、プエルトナタレス行きの船のチケットをお願いする。

ドルのトラベラーズチェックが使えるとのことだったのだが、ドルで釣りも出せないし、両替もできないというので、今日は300米ドルぶんだけ払って残りは明日ということになった。

予約確認書のようなものを受け取り、それと残りの90米ドルを持って明日9時から12時の間に来るよういわれる。これで火曜日以降のルートが決まった。

またバスターミナルに戻る。途中、えらく繁盛しているワゴン車型のサンドイッチ屋さんがあったので、そこでチーズサンドを買う。600ペソ(約160円)。チーズの他には何も挟まれていない非常にシンプルなもの。はっきり言って高い。それに取り立ててうまいということもない。

バスターミナルに行き、チロエ島に行くバスを調べる。ここのターミナルには小さな電光掲示板があり、そこに出発する順にバスの発車時刻とバス会社が載ってるから、調べるのはらく。値段まで書いてくれるともっと楽なのだが。

あいにく往復のバス代を払うだけのペソがなかったので、両替をしなければならなかった。ターミナル内にも両替所はあったが、10時半にならないと開かないという。ATMもあったのだが、なぜかカネを引き落とせない(後に操作ミスだったらしいことがわかる)。

しょうがないので、まちの中心部まで両替所を探しに行く。銀行はいくらでもあるが、銀行で両替をしているところはほとんどないから使えない。ふとFarmasia(薬局)にATMがあることを思いだし、そこを使ってみる。ターミナルのATMはスペイン語オンリーだったので、操作手順がよくわからなかったのだが、こちらは英語だったのでスムーズにおろせる。

さすがに月曜ということで、中心街には人が多い。店もちょうどこれから開けようという店が多かった。

ターミナルに戻り、電光掲示板でバスを確認する。ちょうどこれから出るというバスがあったので、乗り込む。

走り出してから添乗員が、チケットの確認に回ってきたので、そのときに運賃を払う。チロエ島のAncud(アンクー)までは3000ペソ(約800円)。チロエ島独特の家屋が見られるというカストロというところに行きたかったのだが、そこまでは片道5時間以上かかるようだったので諦め、もっと近いアンクーに行くことにした。

バスは大型の40人ほどが乗れるバスで、乗り心地は申し分ない。バスに乗れたことに安心したのか、すぐに寝てしまう。

なんだかバスが横に揺れているような感じがあって、目が覚める。ぼくが座った右側の列の窓のすぐ外にはトレーラーの車体が見える。えらく近いなと思っていたら、何人かがバスを降りていった。バスの正面にもでかいトラックが止まっている。バスは動いていないのに、空は動いているからどういうことになっているのだろう、と改めて背を起こし、辺りを見回す。すると左側の窓の向こうに海が見えた。

どうも海を渡っているらしいことがわかり、ぼくはさっそくバスを降りる。バスは船に載って小さな海峡を渡っているところだった。船の脇のデッキに上り、あたりを見渡す。対岸はよく見えないくらいに遠い。風は冷たいが耐えられないほどではない。

船はそれから30分ほどで、対岸に到着。

道路脇には牧場が広がり、民家もちょこちょこ見える。

プエルトモンのバスターミナルを出てから約2時間後の12時半頃にアンクーのバスターミナルに到着。ターミナルの周りには一軒家の家々と重機の店があるだけで、他には何もない。中心街からは離れているらしい。

ターミナルにインフォメーションがあったので、そこで地図をもらう。

その地図を頼りに中心街に向けて歩く。車道の脇に一段高い歩道があるので、そこを歩く。道は少し起伏のある道で、車は頻繁に通るが歩いている人はいない。

10分ほど歩くと、正面奥の建物の間に海が見える。左手にはスーパーが見え、それをちょっと過ぎたところには木造2階建ての体育館くらいの大きさの建物が現れた。これが市場らしい。建物の感じが、市場というよりも、日本でいうと大きめの道の駅のような感じだ。

なかに入ると、1階部分に野菜や果物、プエルトモンにもあった貝の干し物、魚を売っている店が立ち並び、2階にはセーターや手袋などの毛織物製品や民芸品、喫茶店、食堂があった。木造の建物ということもあり、非常に気持ちのいい建物なのだが、観光シーズンからはずれているからかお客はほとんどいない。

貝の干し物は干し柿を吊すときのように、藁のようなひもに20~30ほどがくくりつけられている。味を見るために貝の干し物を買おうと思ったが、ちょっとだけほしいと言ってるつもりのにわかスペイン語がうまく通じず、結局、すぐに食べられると勧められた湯がいた貝の詰め合わせを買う。1000ペソ(約250円)。

閑散としたその市場を抜けて、まちに出る。ここらから海までが中心市街のようで、八百屋やパン屋、小さなゲームセンター、本屋・文具屋などが立ち並んでいた。

坂を少し上ったところにある広場には下校中らしい高校生くらいの子のたまり場になっていて、広場のあちこちでおしゃべりをしている。

昼飯時だったので、ターミナルのインフォメーションのおじさんが教えてくれた食堂が集まっているところに行く。どの店も小さなところで、看板があまり出ていないし、店内が暗いから、どこの店が食堂で、しかもやっているのかやっていないのかもわかりにくい。

海産物が食べられそうな店に入る。客は4人だけ。大型のテレビは音楽チャンネルになっていて、ずっと英語の歌が流れていた。

メニューを見せられ、いくつかの料理を勧められる。食べようかと思っていたSopa de Mariscosは、ここも貝だらけのようだったのでやめる。クラントがあるというので、プエルトモンで食べてはいたが、ここのクラントがどんなものか興味がわいたので、それを頼む。3000ペソ(約800円)。

20分ほど待ってようやく出てくる。これがまた驚くような盛りつけだった。正確には、盛りつけさえされていないと言ってもいい状態で、日本ではカレーライスに使うような楕円形の平皿に、あのオレンジ色のみかん網に殻付きの牡蠣や蛤のような貝、それから鶏のもも肉にソーセージ、ハムの分厚い切り身、じゃがいもなどがたっぷり入れられた状態で出てきた。

おそらくこのまま鍋の中に入れられていたのだろう。皿に広げようにも、量が多いために網から全部出せば皿からあふれ出ること間違いない。

しょうがないので、網の口を開け、そこにフォークを突っ込み取り出して食べる。網の真ん中あたりにあったジャガイモ(大きなジャガイモ丸ごと1個)は、冷凍されていたものらしく、まったく温かくなっていなかった。やれやれ。

そもそも1人で食べるものではないのかもしれないと思えるくらいに、とにかくすごい量。冷めないうちにと思いながら、せっせと食べる。

一応、完食し、殻の数を数える。牡蠣のような貝がぜんぶで34個、蛤のような貝が20ほどもあった。これに鶏の骨付きもも肉、おそらく200gはあるハムらしい豚肉一枚、太いソーセージ1本、あと冷たくて食べられなかったじゃがいも大1個。ちょっとやりすぎのような木がする。

それから海岸沿いに向かって歩く。ここの湾も漁港になっていて、今日の漁は終わったらしいボートくらいの大きさの漁船が何艇か岸についており、乗っている人が後片付けをしている。

それから適当にぐるっと住宅街をまわる。この辺の民家は壁がうろこのようになっている。それがただの飾りなのか、それとも構造状そういうふうになっているのかはわからないが、見た目だけで判断すると5~10cm幅の野球のホームベースのような5角形(三角形もあるし、頭が丸いものもあり、数種類ある)の木片を、魚の鱗のように張り合わせて壁を作っている。

またチリの北部では家はコンクリートづくりがほとんどだったが、ここはほとんどが木造の家。もっともこれはプエルトモンも含め、南部一般に言えることのように思う。

木造の家のその鱗のような外壁、それに各家の屋根についている煙突。そして牧場と、これで快晴だったら、なんと雰囲気のいいまちだ、と思うだろう。。ちなみに屋根はトタンが圧倒的に多い。

それから最初に言った市場に戻り、そこの2階にある喫茶店でコーヒーブレイク。アップルパイがあったので、それとコーヒーを頼む。合わせて750ペソ(約250円)。

コーヒーはインスタントの粉が入った缶とカップ、砂糖が出てくる。自分で好みの量だけ粉を入れるらしい。適当に粉をカップに入れると、そこにお湯を注いでくれる。

ケーキを頼んだときに一つの発見があった。店の人(20代くらいの女性でこの人も目元を黒く塗る化粧をしていた。ちょっとビジュアル系が入っている)は、ケーキを頼んだときに、"Kuchen(クッヒェン)?”と聞いてきたのだ。

ドイツ系の移民が多いことはガイドブックに載っていたが、ケーキのことをクッヒェンというとは書いていなかった。ドイツ語で書くと正確には"Ku"の"u"には上に点々(・・)2つのウムラウトが付き、発音もカタカナにすると”キュ”に近い音になる(日本ではバウムクーヘンというようにクーヘンと言うのが一般的になっているが)のだが、こんなところにドイツ語が使われているというのが、面白い。

帰りのバスに乗るために、バスターミナルに戻ったときそこの売店でもケーキの隣に"Kuchen"と書いた紙が立てかけられていたので、この辺りではケーキのことを一般的にこう呼んでいるようだった。

ちなみに『ラテン・アメリカを知る事典』によればチリの南部にはドイツ語が使われてる地域もあるという。

14時を過ぎて、中心部も一通り歩き回ったので、今度はバスに乗る。歩いていたらちょうど止まっているバスがあったので、それに乗る。

まちの南部に行くバスかなと期待して乗ったのだが、このバスは北部、つまりは来るときに通った道の方面に行くバスだった。

ずっと乗ったままいると、アンクーのまちに入るときに必ずわたる300mくらいある大きな橋の手前で右に曲がった。海面に近いこの地区はすぐにぬかるんでしまうのか、数10cmほどの高床式になっている家が多い。家も中心部と比べれば小さい。平屋で6畳の部屋が3つもあるかどうかというくらい。ここに来ると道もあまり舗装されていない。

バスはこの地区を一周して、また中心街に向かう。途中、来るときにも通った一本道沿いに建造中の船が見えたので、適当なところでバスを降り、それを見に行く。

一本道からさらに海沿いの道に沿って歩くと、この一帯も漁港というか、船着き場になっているようで貝をいっぱい積んだボートを見る。そのボートが接岸しているところには倉庫のような建物があり、表では貝をせっせと剥いているおじさんがいた。

また北にちょっと歩くと、貝殻が大量に積まれ小山になっているところがあった。そこは策に囲まれ、やはり倉庫のような建物が同じ敷地内にあった。どうも貝殻を加工してカルシウムの粉か何かを作っている工場のようだった。

それからもう少し行ったところが造船中の船があるところだった。長さが30mほどの木造の船で骨組みは出来上がっていた。ボルトであちこちが止められている。今は舳先の方を作っているようで、トンカチの音が一定の間隔で鳴り響いていた。

16時前になったので、またバスに乗ってターミナルに戻る。船に乗るのが夕焼けの時間になるのを狙って、17時前のバスに乗る。

狙ったよりも少し早い時間に海峡につき、バスは船に乗る。ぼくはまたバスを降り、対岸に着くまでデッキにいる。ほぼ狙い通りに、船の上で日が落ちる時間となる。

対岸に上がってしばらく走ると日は完全に落ち、あたりは真っ暗になる。

プエルトモンのターミナルに着いたのは19時頃。昼間のクラントがまだまだ腹の中に残っていたので晩飯は食わずに、宿に戻る。ただ、買ってきたゆで貝の詰め合わせがあったので、それをちびりちびり食べる。ここに来てからはとにかく貝食いばかりしている。

Fin

3 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

>チリ南部でドイツ語・・

なるほど。ブラジルでも南部でドイツ人地域があるようで、ビール祭りも行われます。ラテンアメリカの移民は、出身地域の気候に近いところに住む傾向があるということです。同じ農業ができますからね。

>柿

柿ジュースがあればチャレンジを!ブラジルで飲んだ時、美味しかったです。日系移民が持ち込んだようです。綴りは quaki かな?

ぶらぷらびと さんのコメント...

kaw-kaw さま

ヨーロッパからの移民がどういうふうに各地に定着していったかは気になるところですね。日本人移民とはぜんぜん違う経緯をたどっているのではと想像します。

柿ジュースはチャンスがあったら試してみます。この間買った柿はまだ固くてあまり甘味がなく、ボツでした。綴りはスペイン語ではQuaquiあるいはcaquiでしょう。kはまず使わないので。本当のところどうかは知りませんが。

匿名 さんのコメント...

Quaqui でした。
これがホントのカキ間違い。。。