2008年4月17日木曜日

キトでお休み+詐欺師登場

2008.4.13(日)

・豆、とうきび、じゃがいも
・ゲバラのための歌
・詐欺にあってみる

暑さで寝苦しくはなかったものの、寒くて朝目覚める。6時。外は静かだ。

あいにく空は曇り空。

違うまちに来て、初日ということで出歩きたい気もするが、日記がたまっていたため、今日はそれに当てることにする。

朝起きて、トイレに行こうと部屋を出る。部屋の鍵はそれぞれ旅行者が持参した自分の南京錠でかけることになっている。わずかの時間だが、もしもがあるからと、一旦部屋を出ていたが、南京錠を取りに戻り、鍵を閉めてからトイレに行く。

トイレから戻ってきて部屋のドアでハタと気づく。閉めるための鍵は持って出て、しっかり鍵をしたが、開けるための鍵を持って出なかった。これグアテマラシティの宿のように、ネジを抜けば扉を開けることができるドアだったら良かったのだが、幸か不幸かここの度は鉄板でできており、南京錠をかけている鉄の輪は溶接でドアと完全に一体化している。

窓から入ろうかと思うが、ベランダもなかったし、それにそのためには隣の人を起こさないといけない。

とりあえずはフロントに行く。フロントの人は基本的にスペイン語オンリー。最初、ぼくが言っていることがよくわからないようだったが(単語を並べただけだから当然)、やがて気づき、おおっ、困った顔をする。

そして、フロントの台の引き出しを開け、たくさんの鍵が付いたわっかを取り出し、部屋に行こうと言う。何かと思ったら、100はありそうな大量の鍵の中から、ぼくの南京錠に会う鍵を探し出し、それで開けようというのだ。

ぼくは、おーっと、これは旧ソ連的だと、大学の時ロシアの授業で見せられた旧ソ連時代の映画を思い出す。

その映画は非常に風刺に富んだ映画で、主人公の男がモスクワでさんざんウォッカを飲んでべろんべろんに飲んだ後、タクシーか何かで帰ることになった。しかし、どういう理由だったか忘れたが、言葉が似ているか何かで飛行機に乗ってしまい、違うまちに着く。主人公は酔っぱらったままで、自分がどこをどう移動しているか、つまり飛行機に乗ったことも気づかない。

それで飛行場からタクシーに乗って、運転手に自分の住んでいるアパートの通りと名前を告げる。運転手は言われたとおりにその通りのそのアパートに連れていく。主人公はタクシーを降り、自分の部屋まで上がり、自分の部屋番号の書かれてあるドアに家の鍵を差し込む。

かギはすんなり開いて、主人公は次の日の朝までそこで寝る。次の日、そこの本当の宿主が帰ってきて、顔を合わせた主人公と宿主はお互いにお前は誰だと言い合う。住所を確認しても部屋番号を確認しても、鍵も同じ。

最終的には、部屋の中身かなんかで主人公がおかしいと気づき、帰るのだが、旧ソ連下ではどこのまちにも、例えばレーニン通りがあり、建っているアパートもどこも同じ格好で同じ高さに見えるのが多かった。アパートの鍵も同じ棟の別々の部屋が実は同じ鍵だったということもあったらしく、そのようなことがこの風刺映画の背景になっていた(映画の細かいところは間違っていると思うが)。

その映画とはまったくシチュエーションは違うけれども、同じ鍵を探すなんて発想はなかった。というより、そんなものを宿の人が持っていると思わなかった。

一つ目、宿主のおじさんは鍵穴と同じくらいのサイズの鍵を取り出し、差し込み回す。簡単にまわらず、おじさんは何度も気合いを入れて鍵穴を回そうとする。いやいや、力を入れないと開かない鍵ってあまりないでしょ、と思いながら、いやここは外国だからそういう鍵が普通なのかもしれないと思い直す。

しかし、結局、開かず。これは捜し当てるまでにそうとう時間がかかるし、この中になかったら本当にどうするかなと思っていたところへの、二本目。スパッと鍵穴が動き、南京錠が外れる。すばらしい。

宿主のおじさんは、”Si"とにこっとして去っていく。まるで何事もなかったかのように。

やれやれ、まだまだパナマからの悪いこと(単なる不注意だが)が続いている。

9時、息抜きに外に出る。朝飯を食う場所を探すが、さらっと歩いたところ、きれいな店ばかりであまり面白そうな店がない。

しょうがないので広場に面した客がけっこう入っている店に入る。キトも鶏肉を扱っている店が多い。ここの店頭には鳥が丸ごと串刺しにされて炭火がたかれているオーブンの中をぐるぐるまわっている。

料理は平均すると3ドル程度ものが多い。値段は料理名とともに壁に貼られていて、その中から1.6米ドルのスープを頼む。

ちなみにエクアドルもパナマと同じく紙幣はすべて米ドル。硬貨は米ドルとエクアドル独自のものがごっちゃになっている。だから、日曜に来ても両替する必要がないので楽だ。

出てきたスープは澄んだ色をしてて、その中に鶏の足が入っていた。モモではないあの黄色い鱗模様の足だ。爪はさすがにない。他に入っているのが砂肝とどこかよくわからない部分。

つまり丸焼きにするときに除かれた部分を使ってスープとして出しているようだった。ジャガイモなども入っており、味もあっさりとしていてうまい。足は皮しか食べるところがないので、皮をかじる。

あとあまり肉のついていない、どこかの部分をかじっていたら、黒い縁にゼラチン状の薄い膜のものが、スープの上に落ちた。一瞬何かと思ったが、すぐに目であることがわかる。どうもかじっていたのは頭のよう。皮も何もついてなかたのでよくわからなかったが、改めてみると頭蓋骨のような形をしている。魚の目は食べるけど、鶏のはなぁ、と勝手なことを思いながら、別の皿に取り出す。それにしてもここまで徹底して使っているとは天晴れだ。

ちょっと歩いてみると、日曜と言うことでか、人通りは多い。しかし、店は軒並み休み。食堂くらいしか開いていない。

途中、大きなかごを持ったおばさんから何か買っている人を見る。気になるので寄っていって見ると、おばさんはふかしたジャガイモ売っていた。通りにはトルコのタコスのような屋台は一切なく、物売りしている人も少ない。他のように道端で食事はしないのか、と思っていたが、こうしてかごに入れて売っているよう。おばさんは歩きながら売っており、上には布がかかっているからすぐにはわからない。

一旦宿に戻る。宿の入り口まで来たとき、手前の通りの車の陰にかごをもったおばさんとおばあちゃんを発見。おばあちゃんが持っているものを買う。ゴルフボールくらいの蒸かしたジャガイモと湯がいた大豆、それに豚の皮らしいものを持っていて一つ頼むとはがきサイズくらいのビニール袋にそれぞれを入れ、「Aji(アヒ:唐辛子)?」とぼくに聞いた上で、チリソースを上からかけ、渡される。スペイン語でそれぞれの名前を聞くが、50センターボ(0.5米ドル)と言うだけで伝わっていないよう。

もう一人、小さい3歳くらいの女の子を連れたおばさんは、似ているがまたちょっと違うものを売っていたのでそれを買う。こちらは揚げたバナナチップにトウキビの実と大豆、それにトマトや香菜などで作ったサラダ。おばあさんと同じように小さなビニール袋にそれらを詰め、50センターボ。

それを持って部屋に帰る。部屋に帰って上から売れているかなと、おばあさんの様子を見るとおばさんは車の横で広場の方を見ながらかがんでいる。何をしているのだろうと思っていたら、おばあさんの視線の先には車でパトロールしている警察がいた。

おばあさんたちが、かごを持って立っていたところは、通りの入り口から車が邪魔になって見えにくく、なんでこんな一目の付かないところで商売しているのだろうと思っていたが、どうやらそれは警察の目から逃れるためだったようだ。警察の動きを見ながら、車の陰に隠れようとするおばあさんを上から見ていると、本人には悪いけどなんだか微笑ましい。

また、飽きた頃に外に出てうろうろする。たまたま入ったところは外から見たときはわからなかったが、狭いアーケード街に靴屋と服屋がびっしりと詰まっている通りだった。これこそ他で言う市場の雰囲気。サンフランシスコ広場のすぐ近くで、こんなところがあるとはと驚く。その狭いところを抜けるとショッピングセンターがあった。が、中の店は休み。ここも人があふれ賑わっている。

適当に歩いていたら音楽が聞こえてきたので、音のする方へ行く。聞こえてくる歌は聞き覚えがある歌。なんだっけな、と思っていたら、サビの部分にかかったところでビリージョエルの(たぶん)ピアノマンという歌であることがわかる。スペイン語で歌っており、曲も少しアレンジされているが、サビの部分はあまり変わりない。

昨日、お菓子を買った広場にはテントが張られ、その前で白い衣装を着た8人構成(だったか)のグループが演奏している。年齢層は高い。一言で言えばおじさん。

広場に面してある大聖堂(カテドラル)の階段が、即席の客席になっており、そこに200人くらい座っており、周りを含めるとけっこうな人だかりができている。幸い、みんなそんなに背が高くないので、ぼくの身長でも歌っている人の顔が見える。

アンデス系の人。ギターやドラムの他にマラカス、ケーナを持った人がいる。メキシコのグアダラハラに行ったときにも着いたその日にコンサートが行われており、しかもそのグループはメキシコで超人気グループだった。

ここでももしや同じことが合ってるのかもしれないと思い、しばし聞く。「コンドルは飛んでいく」のようにゆったりとしたメロディではなく、どちらかと言えば早いリズムの曲が多い。歌がなく、楽器の演奏だけという曲も。

聞き初めて3曲目だっただろうか、今度はゆっくりしたメロディの歌だった。有名な歌らしく口ずさんでいる人もけっこういる。段々曲が盛り上がってきて最後のサビの部分、聞こえてきた言葉は、「コーマンダンテ、チェ ゲバ~ラ」だった。
ゲバラに捧げる歌があることは知っていたが、実際に聞いたのは初めて。一緒に歌っているしわしわのおじいさんやおばさんを見て、ゲバラがそうとう根付いているのだな、と改めて感じる。

その次の歌がラストの予定だったらしく、曲の最後にメインボーカルの人はいろいろ礼らしきことを行った後、最後に”Viva Latin America"と言って締めくくる。

が、「オートラ、オートラ(もう1曲:言葉の意味としては別の、他の”という意味)」とう観客のアンコールに応えて2曲続けてアンコール演奏。どれもみな知っている歌らしく口ずさんでいる人が多い。また、演奏者の前にできているスペースではおばさんや小さな女の子が出てきて踊り出す。腰の曲がったがりがりのおじいさんも出てきて踊りだし、それを見て、ぼくの後ろにいたおばさんは一緒に来ていた人と微笑み合う。

ステージはなく、テントの前の路上での演奏だったこともあってか、終わってから演奏者に握手を求めている人もいる。ぼくは司会をしていた女性にグループの名前を聞く。グループの名前はHUIPALA(ウイパラ)と言うらしい。

ぼくはいやいや良かったと”コーマンダンテ チェ ゲバ~ラ”
のフレーズを口ずさみながら宿に戻る。

宿に帰ってもぞもぞしていると、ドアを叩く音がする。何かと思い、出ると髭ずらのヨーロッパ系の男の人が立っている。そして、ぼくの隣の人を訪ねて来たんだが、いなくて困っているという。彼が言うには荷物を全部盗まれて、これから空港から変えるのだが、エアポートタックスの料金40米ドルが足りず、それを借りに隣の人のところに来たらしい。

隣の部屋の人は彼の友達で、その友達が書いたらしい宿の住所と部屋番号、名前を書いたメモを見せる。それから、ぼくに彼から返してもらうように言うから、今、40ドルを貸してくれないかと言う。

はい、きたー、これが噂の盗難されました詐欺か。と、思い、そんなカネはないと断る。ちなみにやりとりは英語。しかし、断ってしまっては、この人が本当に詐欺かどうかはわからない。どんな展開になるか一度経験するのも面白いなと思い直す。

断ると、彼はプリーズなどと懇願してくる。そして、紙に隣の人へのメッセージを書くから、これを渡してと筆記体の英語でさらさらと隣の日本人に40ドル借りたから返しておいてくれと書き、最後に自分のサインをする。

ぼくは隣の人の名前を知らなかったので、フロントに行って彼が言っている人の名前があっているか確認する。宿帳に書かれた文字は彼が持っているメモの字と同じ。どうやら知り合いということは間違いないらしい。

しかし、怪しいのはカネの貸し借りができるほどの友人と同じ宿に泊まっていないことだ。旅行者が、カネの貸し借りができる友人というなら、同国人の古い友人しかありえない。旅先で会った人にカネを借りることもありえるが、その場合は貸す側からすれば基本的に返ってこないことを想定しなければいけない。

それにもし借りに隣の人が友人だとしても、その隣の人がそんな人知らないと言ってしまえば、ぼくにカネは戻ってこないことになる。

しかし、どうなるか気になるので、返ってこないだろうなと思いながら30ドル渡す。20ドルは完全に捨て金で10ドルはもしかしたら戻ってくるかもという希望的観測によるカネだった。

彼は空港から宿に電話するからと言って、階段を下りていく。彼を見送った後で、どうせならパスポートを見せてもらい、かつデジカメでビデオメッセージを撮っておけば良かったと思うが、時すでに遅し。

夜、隣のドアが開く音を聞いて、訪ねる。隣は初めて顔を合わせたが、ヨーロッパ系の若い男の人だった。彼のメモを見せると、Thank youと言って、なんだかスムーズにいく。おお、これは詐欺じゃなかったんだと思ったのも束の間、彼はそのメモをじっくり読むと、どういうことかよくわからないと言い出す。

それで事の次第を話すと、"Oh,God"と両手を頭にやって”I can't believe this.”と言う。友達じゃないのかと聞くと、広場に面したネットカフェで会ったことがあるだけだという。そして、ちょっと彼とのことをぼくに話さないといけないと言って語り出す。

彼の話では、ネットカフェでそいつに会ったとき、そいつはコロンビアで荷物を盗られ、週末をしのぐカネががないから20ドル貸してくれと言ってきたらしい。そして、月曜日になればカードでカネがおろせるからと。それで、そのとき彼はそいつに20米ドル渡した。月曜日の夕方16時にこの宿にカネを返しに来るよう言っていた。しかし、彼はその日、この宿には現れなかったと言う。そのときはオーストラリア人を名乗っていたらしい。ちなみに、今回はドイツ人。

これで完全に詐欺師だということが判明。彼はメモに書かれていた詐欺師のメールアドレスに、自分が怒っている旨などを書いて送ると言う。でも、おそらくこのメールアドレスは存在しないだろうとも。

彼は宿のパソコンでメールを送った後、こんなことで時間とカネをロスして本当に頭にくる、と言う。そして、これはお互いにとって人を信じるための人生のレッスンだとも。

まぁ、予想はしていたとは言え、やっぱり10米ドルにしておけば良かったとちょっと後悔。でも、まぁ、おもしろい。

この構造が面白いのは、詐欺師は金持ち旅行者ではなく、カネをあまり持っていないバックパッカーを狙っているということ。どうせなら金持ち旅行者を狙えばいいのに、少しのカネで好奇心と人によっては何らかの問題意識を持って旅行しているバックパッカーを狙う。カネがない人の方が、人が良かったりするから、彼のように困っている人がいれば手を差し伸べることを厭わない人がはまると易々とカネを手中にすることができる。

まぁ、もっとも、ネットカフェで話しかけて話に乗るのは、そもそも若いバックパッカーくらいしかいないかもしれないけれども。

朝の鍵の件といい、今回の詐欺といい、まだまだだな。

2008.4.16
キトよりアップ

7 件のコメント:

Unknown さんのコメント...

ふうさん、アンネのバラ友です。

何事も勉強ですね。
詐欺師に授業料を支払いましたね。

世界旅行もまだ、9ヶ月?ありますね。
タクシー代もかなりかかっていますが、
予算は大丈夫ですか。

匿名 さんのコメント...

最近気づいたが、食い物ネタが多いな。
おぬしらしいぜ。

匿名 さんのコメント...

>詐欺師

犯罪には文化があります。ラテンアメリカでは、いきなり殺傷事件に発展することが多く、詐欺的な犯罪はアジアに多いと思っていました。ラテンアメリカで詐欺師なんですね。

まあ、私が「いきなり殺傷文化圏」に勝手に分類しているナイロビでも詐欺まがいはいました。
詐「私の友達はTOKYOの大学に行って、歯科の勉強をしている」
私「何という大学ですか。」
詐「Kyoto University....」

笑い話で済んだから良いものの、気をつけて下さいね。細かいミスが続くということは、大きな事故が近いということでもあります。テンクイダードです。

匿名 さんのコメント...

劇団すずっす。

おもしろいなぁぁあ。

旅してる気分で読んでる。
私も一人旅したいぃ!!

これからも日記楽しみにしてるよ!

体に気をつけてね。

ぶらぷらびと さんのコメント...

アンネのバラ友さま
もう一度同じようなことがないか、期待して待ってます。
今度は完全に追い詰めて、できればこっちがもらうくらいに、、、

予算は予定よりもだいぶ早く消化が進んでいるのですが
、まだ大丈夫です。こっちでもそこここで宝くじを売っているので、それを買おうかと思ったりもしますが、、、、


加奈子さまさま
一応、世界の人がどんなものを食っているかが一つのテーマだからできるだけ食ったことのないものは試してるわけよ。でも、キトの
ゆで大豆とかとうきびははあまりぼくの消火器系にはよくないみたいで、腹の調子が わるいわ。

kaw-kaw さま

詐欺し自身はこちらの人間ではなく、ヨーロッパ系の人間だと思います。英語が流暢でスペイン語はあまりできてなかったので。

あとから思うと、ということが多いので、気をつけます。ちなみに今日も盗難に遭いそうになりました
。やれやれ。

劇団すずさま

どうもどうもお気遣いのお言葉ありがとうございます。楽しんでもらえて何より。

けっこう日本人の女の人でも一人旅してるからチャンスを見つけてぜひ。
百聞は一見にしかずってのが、一部はほんとうだなってわかるよ。

匿名 さんのコメント...

>けっこう日本人の女の人でも一人旅してるからチャンスを見つけてぜひ。

ここだけ読むと、旅先でナンパしようとしているのかと思いました。(笑)

ぶらぷらびと さんのコメント...

kaw-kaw さま

そのように読まれるとは。まぁ、そういう人もいるみたいですが。