2008年4月30日水曜日

本:『「ことば」の課外授業』

西江雅之『「ことば」の課外授業-”ハダシの学者”の言語学1週間』洋泉社新書、2003

16
現在、世界に存在している言語数は約6700種ほど
そのうち億単位の話者を持つのは10種内外、多くは話者数千人から一人や二人という絶滅寸前の言語。

48
現在、世界で使われている文字は360種類くらい。
「つまり、一つの種類の文字を、実にたくさんの言語が使ってることになります。」

53
ある国の少数民族の人は、自分の言語と同時に、隣の大きな集団の言語も話せる。と同時に、国民として仕事をしたり学校に行ったりするときには、その国の公用語で生活するため、三言語を話して日々を過ごしている。

「二言語どころか、三言語、四言語話すのが常識であって、日常生活はそんなものだと思いこんでいる社会も、世界には意外に多い。」

17-22
異なった言語とは何か?
→言語自体に何か基準があるというよりも、政治や歴史の問題から○○語と呼ばれている場合が多い。
例)朝鮮語と韓国語、英語と米語、ヒンディー語とウルドゥー語、オランダ語とベルギーにおけるフラマン語、フランス語とベルギーにおけるワロン語など

32-33
「何カ国語話せますか?」という間違った質問。
→正確には「何言語話せるか」

35
「現在、数千もの言語の話者は自分の言語、すなわち母語を書くための文字はもっていません。その人々は、その国の公用語なり国語なりで読み書きするからです。」

36
「文字社会というのは、何か事が起きた場合に、文字で書かれたものを参考にして意味づけをしていく傾向が強い」

37
「時間とか空間という非常に重要な二つの要素を見ても、文字社会は書かれた言語資料を基本にして物事を処理していく。ところが文字のない社会では、情動とか価値といったもので序列をつけたり、物を組み立てたりする傾向が強いんです。」

38
「論理的に、文字がないと作ることが不可能だというものが、現在のわたし達のみのまわりにはいっぱいある」

39
「「非識字者」というのは、文字がない社会には存在しない」

「自分の国で使っている文字が読めない非識字者。それとは別に、自分の国で使っている文字は自由に読み書きできるけれども、自分が働いている土地で使われている言語の文字は読めないという非識字者。その二種類の人々がいて、今、世界各地の現場では、そういう人たちがいっぱい働いている」

「東アフリカの沿岸部では、イスラム教徒として育ったのでアラビア文字での読み書きはできるが、その国の公用語である英語やスワヒリ語で使われているローマ字は知らないという老人に、何人も会った」

70
「ある社会で見られる、話題による言語の切り替え」を「ダイグロッシア」という。

ダイグロッシアには社会の価値観、連帯感などのあり方が表れる。

言葉の意味とは?
その1は「価値」
その2は「置き換え」
その3は「世界の創り変え」→「日常生活で「意味を問う」などというのは、現状を疑い、現状を変革すること」

「学問は尻拭いである」「ここの例は多面体である」

123-124
伝え合いの7要素
1.「ことば」:言語、パラ・ランゲージ、脈絡、評価
2.当人たちの身体や性格面での「人物特徴」
3.顔の表情の変化や視線の動きを含む「体の動き」
4.伝え合いをしている人物がいる周辺環境としての「場の問題」
5.直接的な接触によるものや顔色の変化などに見られる「生理的反応」
6.お互いの距離、スペース、そのときの時刻、伝え合いの内容を表現するためにかかる時間などの「空間と時間」
7.当人たちの社会生活上での地位や立場といった「人物の社会的背景」

「この七つの要素での話で大事なことは、一つ一つの要素が互いに溶け合っているということです。溶け合っているわけですから、その要素の中の一つだけを独立させて伝え合いを行うことはありえない」

134
「世界のほとんどの言語は、その言語を話すときに使っている、またはその言語が必要としている音声の種類は、およそ三十数種類」

ヴォーカルコミュニケーション

189
使える単語、知っているつもりの単語、知らない単語

206-207
「言語で額面通りに表現することは、どの言語でも可能です。でも実際の会話では、そうは言わない。・・・」
「外国語を勉強するとき、まずは単語、それから文法の基本的な形も覚えるでしょうが、だんだん理解がすすんでいけば、その言語を母語とする人たちが、自分たちの言いたいことを、どのように表現しているか、ということにも留意する必要が出てくるだろうということです。」

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