2008年4月30日水曜日

本:『山猫の夏』

船戸与一『山猫の夏』講談社文庫、1995

モデルらしきもの
ブラジル、ペルナンブコ州のエシュウ。
エシュウ=奴隷として連れてこられたヨルバ族の言葉で「悪霊」の意味。
ここでアレンカール家とサンパイオ家という2家族が30数年間に渡って殺し合いを続けている。

【作品について】
現代史に絡めたさまざまな複線を張っているのがおもしろい。主人公の山猫は、2・26事件の下絵を書きながら説得により実際の事件には加わらなかった皇道派将校の子どもで、父親が事件後にブラジルに渡ったことから、彼はブラジルで育つことになる。敗戦を認めるか認めないかで分裂したブラジルの日系人社会のこと。それからアフリカから連れてこられた奴隷の逃亡と自治の歴史。物語る”俺”の活動家としての歴史。そしてブラジル現代史(英雄的な盗賊、独立運動、アマゾン開発とそこに暮らす人々・・・)、。この1冊でブラジルのいろんな断面を知ることができる。ストーリーの展開ももちろんおもしろい。

08/04/24
リマで読了

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