2008.2.15(木)
サンクリストバル・デ・ラスカサス
宿に到着したのは7時。
まだ起きてないだろうなと思ってブザーを押す。
すると30代後半かと思われる日本人男性ガ出てくる。
予約してないんですけど、今日泊まれますか?
と聞くと、ああ、そういう方ですか、と言って、実は宿の世話人は
8時くらいにならないと起きてこないんですよ、と続ける。
まぁ、中に入ってと促され、中に入ると右手の壁に巨大な地図が目に入る。
しばし待つ間、リビングをふらつく。壁にはサンクリストバル周辺の情報が書き込まれたタイプの違う地図が3枚ほど。
その奥には中米と南米の観光情報が緻密に書き込まれた、これまた巨大な地図が貼られている。
例えば南米の地図には一般的な観光情報のみならず、ゲバラが殺されたボリビアの村まで書かれている。すごい。
この地図はこの宿を経営していた人が作成したものらしい。
廊下にはメキシコに関する日本語の本が並び、中には三里塚闘争の本も混じっている。
マンガもあれこれあり、マスターキートンや手塚治本、ワンピースなどが並ぶ。
メキシコシティで泊まった日本人宿にはメキシコ関係の本がなくて驚いたが、ここには入門書の『メキシコを知るための60章』や新書本、ナショナルジオグラフィックのメキシコ特集号、ジェトロが出している経済関係本、そしてサパティスタに関する本などがそろっている。
ぼくがサンクリストバルに来たのは、ここがメキシコでも最貧州と言われているチアパス州の中心地(州都ではないが、元はそうだった)であり、先住民と呼ばれている人たちが独自の文化を守りながら生きている地域だと数年前に知ったからだ。
ただ、なかなか日本にいる間には、ここについてのことを調べる時間がなく、上記のような本を持って来ようか迷い、結局持ってこなかった。
そこで、この宿のHPにサパティスタのことが書かれていたので、ここに行けば関連の情報があるのではと皮算用をしていたら、狙いは的中した。
だが、日中に本を読むのはもったいないので、勉強は夜にして、早速出かける。
まずはお決まりのメルカド(市場)に。
宿を出て最初に目を奪われたのが、瓦の屋根。瓦と言っても、日本のような瓦ではなく、材質は煉瓦のよう。オレンジ色で半円系の瓦を上下に組み合わせて(U字にしたものをまずは並べ、その並んでいる継ぎ目の部分に逆U字にしたものを乗せて)水が入るのを防止している。
屋根も日本と同じように傾斜している。これまで見てきたメキシコの家は豪邸をのぞき多くがコンクリートや石造りの四角い家で、屋根が傾斜したものは見た記憶がない。
また歩いていて思ったのが、野良犬がやたらに多いこと。kれまでのまちでは見てもせいぜい1日に2~3匹だった。それが10分ほど歩くと5~6匹見る。ただ総じておとなしく吠えたりしてくることはない。これには安心。狂犬病の注射はしたとは言え、犬には噛まれるのはおろか追っかけられたくもない。だいたいここは標高2163m。走って逃げても犬に追いつかれる前に高山病でぶっ倒れそうだ。
メルカドには10分ほど歩いて到着。
人口規模は13万人とグアナファトとほぼ同じこともあって、メルカド自体の建物の大きさはほぼ同じだが、野菜などの生鮮品を売っている人の数がこちらの方が断然多い。
それも売り手に先住民系の人が多い。光沢のある鮮やかな色の上衣に赤や紫、青などこれまた鮮やかな色の刺繍が縫い込まれたスカート、そして帯。こうしたいわゆる民族衣装を着ているのは女性ばかりで、男性はまず見かけない。母親と一緒になって野菜や果物を売っている子どもも、女の子はそうした民族衣装を着ているが、男の子はジーパンにTシャツなど、日本のこと変わらない。ただ、かなり着古していることを除けば。
先住民の女性たちの髪型は、いわゆるひとつ結び(ポニーテール)か、2つ結び’(おさげ?)。2つ結びの人は3つ編みになっており、中にはリボンに使うような3cm幅くらい生地を一緒に編み込んでいる人もいる。
その昔、ベーリング海を渡って来たと言われているだけあって、顔はアジア系にそっくり。身長も150cm程度。
これまで見てきたまちの光景と違うのは、スカートをはいている人の率の多さ。先住民の人たちの格好をスカートというには、言葉が違うと思うが、便宜上スカート系ということにしたとして、そのスカート系をはいている人が多い。
これまで見てきたまちでは、スカート系をはいている人は制服を着ている高校生等を除けばごくまれだった。どういう理由によるかはわからない。
話を戻して、一目見てこれまで見てきた光景と違うのが、子どもたちが働いていること。
親と一緒に声を張り上げて野菜や果物を売っている女の子もいれば、ガムなど小さいお菓子が詰まったボックスを持って売り歩いている子もいる。また子ども用のリュックザックを腕に20も30もひっかけ抱いて売っている男の子もいる。あるいは小さな妹だか弟だかを布でハンモックのように包んで自分の体に結びつけ、おもりをしている女の子もいる。
ティファナでもグアダラハラでもグアナファトでも、路上で物売りをしている先住民の親子がいたが、これだけたくさん集まった状態で見るのは初めて。もちろんたくさんと言っても数千とかじゃなくて、市場周辺で言えば100人や200人くらいだと思うが。
これまでメキシコでは3つのまちで市場を見てきたが、ここで初めて見たものがあれこれあった。
まずは、生きている鶏や七面鳥、子豚。これらはメルカドの中ではないが、その周辺の路上や簡易テントのような店で売られている。鶏は肉付きがよく、重さもかなりありそう。雄鳥も売られている。
道ばたで鶏を売っているおばちゃん(見た目はおばあちゃんだが)は、鶏の二本の足をひもで結び、そのつないでいる紐を自分の腕にかけ、鶏を逆さにした状態で持っている。細い腕には逆さになった鶏が3羽。1羽3kgとしてもけっこう重いはずだ。その状態で道行く人に声をかけている。が、なかなか簡単には買い手がつかない。
さて、ここではじめて見たものの2番目は、ろうそくの専門店。回った限りで10店舗ほどあり、色も様々なろうそくが店頭にぶら下げられている。大きさは日本で通常使うものよりも遙かに大きい。きっとこれは先住民の儀式で使うものなんだろう。
またメルカド近くのサントドミンゴ教会では先住民の人たちが作った服やポシェットなどが売っている。近くの道ばたでは黒い毛を売っている(黒い羊みたいなものを午後に行った村で見る)。その毛を売っているおばちゃんは、客が来ない間はひたすら刺繍をしている。
一通り市場を見て回ったところで、メルカドの入り口の広場に戻り、そこで朝飯代わりに売られているものを買う。名前を忘れたが、まずは笹団子のとうきび版みたいなもの。トウキビの粉に小豆のような豆のすりつぶしたのを蒸して作ったようで、笹やとうきびの外側の皮(葉)に包まれている。
食べてみるととうきびの味が強烈。味は特についていないようで、ただとうきびの味に、若干の弱い小豆のような味がする。ただ、水分が蒸発したのか、これが普通なのか、団子を食べる気分で食べると、パサパサしている感じを強く受ける。これが1つ1ペソ。あまりに安いので驚いた。これまでの感覚では1つ5ペソ位かと思っていたのだが。
それからガイドブックにも載っていて気になっていたものにやっとありつく。他のまちでも見かけたが、満腹状態だったりでこれまで食べてなかった。
それはタマレスと呼ばれるもので、ガイドブックによれば古代マヤ伝来の食べ物らしい。市場のある店で食べている人がいたので、自分も頼むとトウキビの葉に包まれた枕の形をしたものが出てくる。
葉をほどき、フォークで枕状のそれの真ん中を開くと中には牛肉が。チリソースがかかっているようで、赤い。食べてみるとトウキビの味はさっきのよりも弱いが、肉の味がしっかりしている。それからチリソースが効いていて思ったりも辛い。
これに飲み物も同じ店で食べていた先住民系の人と同じものを頼む。すると発泡スチロールのコップに薄いピンク色の飲み物が出てくる。飲むとどろっとしていて、甘い。が、お代わりをしたくなるような味ではない。甘さがイチゴっぽかったので、イチゴが入っているのか聞いたところ、それも入っているようだが、それ以外にいろいろ説明され、当然のことながら意味がわからず、真相はわからず仕舞。この後、読んだ本によればトウキビの粉を溶かして飲む飲み物があるとあったので、たぶんそれなんだろう。両方併せて20ペソ(約250円)
それから、魚をその場で揚げて売っている店があったので、それも食べてみる。魚の名前を聞いたが、???ピラティアと言われ、後半しか聞き取れず。お値段は10ペソ(100円)。一人で食べるには大きいくらい。
魚は紙に包まれ、それにリモ(かぼすみたいなもの)の半分とチリソースがつき、袋に入れられ、渡される。
さっそく、教会の端っこの座れるところで賞味する。またもや箸があればと思うのだが、まだ入手できていない。よって、頭としっぽを握って食う。
味は淡泊で、ときに泥臭さを感じる。どっかの川か沼かの魚なんだろう。揚げられているので、大きな骨以外は頭からしっぽまで食べられるが、あたりをうろうろしている犬がいたので、あまり身の付いていないわき腹辺りをくれてやる。
犬はボリボリと骨も食らい、こちらを向き次を待つ。しょうがないから頭の半分だけあげる。残り半分は自分で食べる。魚はやっぱり骨がうまい。
ここで一旦宿に帰る。朝行ったときは部屋はいっぱいだった。が、誰か出るのでその後に部屋に入れることになっていた。荷物も外にだしっぱなしだったし。
宿に戻ると部屋が空いていたので、そちらに荷物を移動。3人部屋。ここも鍵はない。
また市場の方に戻り、今度はコレクティボという乗り合いタクシーを探す。ユニークな刺繍や織物がみれるというサンアンドレス・ララインサールという先住民の村に行くためだ。
つづく
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