2008年2月7日木曜日

ロサンゼルス滞在記 その4 日系博物館とリトル東京

(2008.1.31 後編)

ロサンゼルスで気になっていたのが、日系人が数年前に建てたという日系移民の歴史ミュージアムだった。

正式名称はJAPANESE AMERICAN NATIONAL MUSEUMで、リトル東京の一角に建物がある。

館に入り、受付の前に立ちだまってお金を取り出そうとしていると、受付の人に「大人一人ですか?」と聞かれる。入場料の8ドルを払い、展示物がある2階に向かう。すると階段の上がり口の看板の文字が目に入る。

「FIGHTING FOR DEMOCRACY」

その文字の左上には少し小さな字で、「WHO IS THE "WE" IN "WE THE PEOPLE?"」とある。

2階には、移民して来る際の持ち物や第2次大戦中の強制収容所での様子を移した写真など、数百点の文書や写真、生活用品などが展示されている。

客はぼくの他に韓国人の若いカップルが1組だけ。

日系移民については、まともに調べたりしていないので知らなかったが、アメリカも相当なことをしてきたようだ。

1880年代からハワイやアメリカへの出稼ぎ(鉄道建設など)が始まり、主に独身男性が渡米した。先に入っていた中国人と同様に、アメリカは日本人移民を差別し、1913年と1920年には外国人土地法を制定し、日本人の土地所有を禁止した。

そして、1924年には新移民法を制定し、新たな日本人移民の入国を禁止した。

日米戦争の時には、日系人の忠誠心の調査をし、その調査を担当したカーチス・マンソンは十分に忠誠心があり、軍事的な脅威はないと結論づけたのに、本部はその調査結果を無視し、強制収容することになった。

館内には、当時の強制収容所の建物が一部移築・復元されており、このことからも当時のアメリカがやったことがどれだけ大きなことだったかがわかる。

もうひとつ展示物を見ていて目に付くのが、Communityという言葉だ。数えてみたら面白かったのかもしれないが、とにかく何度もこの言葉が出てくる。

例えば、ある展示物にあった次のような言葉。

Most of us belong to a variety of communities-both communities of place and communities of sprit.

Communities is not just where you live.
Communities is also about who you are.
Forming a community is a process.
It takes hard work and commitment.
Community is where your heart is.

上のようなことは、一般的なことではあるが、それをこうして掲げているところに、アメリカの厳しい時代を生き抜いてきた人たちにとって、日系人コミュニティがどれだけ支えになったかを伺わせる。

アメリカは様々なコミュニティから成り立っている社会である、といったことは、どっかの本でも書いてあったが、多様な歴史的背景を持った集団同士が一つの国の中で共生していくということは、こういうことかと思う。

アメリカ先住民からヨーロッパ系の人々が土地を奪った後に、そこへ各地から新たな人々が流れ込み、その流れ込んだ中でも、より早くからの先住者は自分らの既得権を守ろうと壁を作る。しかし、建国の建前があるから、後発の移民たちはその建前を盾に同等の権利を要求する。大ざっぱに言えば、アメリカ合州国の歴史は、そのようなものなのではないか。そして、その異なる集団間の権利のための闘争は、今も継続中であると。

館内の展示物に関する説明文は、英語と日本語で書かれているが、日本語よりも英語のものの方が多い。夕方の閉館前に行ったことと、ぼく自身がすらすらと英語を読めないこともあり、十分には理解できていないような気がするが、今回はこれがマックス。

中国系移民の人たちが作った博物館もあるようなので、そこにも行きたかったが、時間切れ。またの機会にする。

館を後にし、あたりをふらつく。

あたりはリトル東京というだけあって、日本語の看板だらけ。ただ率直に言えば、”東京”と掲げるのには、違和感を感じた。どちらかと言えば、そばや鮨など、日本的なものを売りにしているし、そもそも東京は日本の中でも異常なところだ(と思う)。つまりは、ぼくの東京のイメージ(と言ってもここ10年ほどしか知らないが)とは合わないのです。もっともこの名前にしたのは、知名度や観光的観点から付けられたのかもしれないが。

チャイナタウンやコリアンタウンは聞くけど、リトルペキンとかリトルソウルというのはあるんかな。

一角にモールみたいな場所があり、その中にいろんなフリーペーパーを置いているコーナーがあった。日本語のものが多くあり、3種類ほどもらって帰る。中を見ると、最近の日本でのニュースや日系の人がやっている会社や事務所の広告、求人情報などが載っている。"U.S.FrontLine"は沖縄からの移民の人の話が多く載っており、"Lighthouse"では「教科書では語りきれない日米関係の歴史150年」と題した特集記事が、7ページにわたって掲載されていた。求人情報については、こんなにもあるのかと驚く。確かにこのコミュニティに入れば、いろんなことがスムーズにいきそうな気もする。

夕方、日も暮れようとしていた時間だったから、ここで飯を食うのもありだったのだが、日本食のメニューを見てると、食べる気がせず通過。

地下鉄で宿に戻る。

電車を降りたらホームに5人ほど警官がいて、チケットを見せろといわれる。ロサンゼルスは、ドイツなどと同じように日本のような改札はなく、チケットを買ってもそのチェックが常にあるわけではない。だから、ただで乗ろうと思えば乗ることはできるのだが、こうしたたまの改札にひっかかると大変なことになる。

地上に上がると多くの人だかりができている。何事かと思い行ってみたら、ちょうど宿の前にある施設でCNNの大統領選挙のイベントをやっているようで、おばまとクリントンそれぞれの支持者が集まり、大画面のスクリーンに映し出されている映像を見ている。CNNの番組に二人で出席し、なにやら討論みたいなものをやっているようで、ときおりそれぞれの発言に対し、それぞれの支持者から歓声があがる。

その施設を出たところでは、イラク侵略5周年ということで、デモに来ている人たちが Democracy Now! などリズムに合わせ声を張り上げている。

選挙のイベントやデモには中学生くらい子どもから大人まで老若男女が集って、それぞれがそれぞれの主張をしている。日本ではなかなかお目にかけない光景に、アメリカの民主主義の一端を見たような気がする。

宿に戻り、明日メキシコに向かう準備をして、寝る。

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