2008年3月5日水曜日

バラコアからグアンタナモへ つづき

2008.2.29(金)
くもり時々晴れ

集落を通る度に少しずつ乗客が減り、椅子にも余裕ができてきたが、比較的大きなまちに着くとそこでまたどかどかと人が乗ってきて、またもやすし詰め状態になる。ざっと数えたところ80人くらい乗っている。乗車率で言えば150%くらいか。

エンジン音などがやかましいこともあってか、おしゃべりしている人は少ない。どこどこと走っているとき、ピィーと口笛が後ろの方からする。音がした方を無垢と、乗客を整理し、カネを集金している車主が、スペイン語でなにやらいいながら腕を上下させて”しゃがめ”という合図をする。

前方で窓から顔を出してた人に向かっているようで、顔を出していた人たちがしゃがむ。そして、しばらくしたら元の状態に戻る。どうも警察か何かがいたようで、それに見つからないようにするためのようだ。その後ももう一度、同じようなことがある。

出発してから4時間。グアンタナモに到着。ターミナルに着くかと思っていたが、公園の横に止まり、降りろと言われる。すぐ近くが馬車のターミナルのようになっていて、馬車の運転手のおじさんが”ターミナル!”と声を上げて、客を呼んでいる。

ロンリープラネットのキューバ版を持ってくれば、それに市内の地図が載っていたのだが、あいにくないので、適当に中心部を目指して歩く。バラコアに行くときにバスが少しだけグアンタナモのまちを通ったので、そのときに中心部にホセマルティ広場があることはわかっていた。

歩いて10分ほどで中心部に出る。ネットができる電話局があったので、そこでメールを確認。ジャマイカの宿から返事が来ていたが、ここの3台のパソコンをすべて試してみたが、すべて日本語が読めず。日本語が読めないのはバラコアについで2カ所目。

それから今夜泊まるカーサパティキュラー(政府公認の民宿)を探す。他のまちなら30分も歩けば10カ所はかるく見つけられたが、ここはさすがに観光地でないだけあって、見つかったのは 4カ所程度。一番、バスターミナルの近くだと思われる場所にある宿に泊まることにし、ドアをノックする。

若い女の人が出てきて、中に入れてくれる。中心街に近い家だからまた金持ちなんだろうなと思っていたら、案の定中庭があり、リビングと思われるところにはサムソンのコンポ、テレビがあり、部屋は見渡すだけでも5部屋ある。

案内してくれたその女の人は、雇われている人のようで、家主のおばあさんをまず紹介してくれる。おばあさんはにこやかに迎えてくれて、すぐに部屋を2種類、見せてくれる。いずれも広い部屋でパッと見た感じは文句なし(実際に使ったら違ったが)。

ただ、これだけの部屋だと30cuc位するだろうなと思い、値段を聞くと22cucと言う。予算は15cuc(食事なし)の予定だから、予算オーバー。それで、案内してくれている女の人に15cucで泊まれないかと聞くと、家主に聞いてと言われる。

家主のおばあさんに10cucか15cucで泊まれないかと聞くと、10はノーとすぐに言われ、15cucで話がつく。よかった。それで部屋に荷物を置いて、パスポートを渡しにおばあさんの部屋に行く。おばあさんは、パソコンでなにやら文書を作っていたよう。見た目70歳くらいだから、そのくらいの年齢でパソコン使うなんてインテリかコンピューターおばあちゃんなんかな。

宿帳にサインをして、手続きは終了。今晩の食事と明日の朝の食事、明日何時に出るかを聞かれ、今晩の食事はなしで、朝食はお願いする。

まちに出て、まずは明日サンティアゴに行くためのバスターミナルを探す。さっき着いた広場で聞いたら、やはりここは後者専用あるいはバラコア行き専用なのか、ここではないと言われる。

そのターミナルにはどうやったら行けるか聞くと、馬車に乗って行けと言うので、馬車の運転手(?)にターミナルに行きたいというと乗れと言われるしない。今回は地元客がすでに乗っている馬車だったので、代金は地元客と同じ1ペソで済む。

”ハジョー”と言いながら運転手が馬の右の後ろ足の太股部分をぶつ。鞭(むち)は、皮ではなくてビニール製の飛び縄のようなものでできていて、持つ部分は木製。ぶたれる度に馬は早足になる。痛そう。

それにしてもきちんと右側通行を守って、止まるところでは止まるなんて、どうやって馬をしつけたのだろう。馬車屋さんの一連の仕事を調べてみると面白そう。

20分ほど乗ったところで、バスターミナルの近くに着いた。一緒に乗っていたおばちゃんがここだと合図してくれる。そして、あっちをこう行くとバスターミナルがあると教えてくれる。

言われた方へ行くと、幹線道路があり、サンティアゴ行きの車などがそこを走っている。歩道にはバスを捕まえようとしている人や乗り合いタクシーを捕まえようとしている人もいる。幹線道路から一段低い広場みたいなところには今日乗ってきたようなトラックバスが停まっているのが見える。が、ターミナルというよりも公園の駐車場。もっともそこは舗装もされていないので、日本の感覚で言うと、誰かが勝手に車をおいているだけの場所という感じだ。

念のためトラックの近くまで行き確認する。サンティアゴで事前に見たトラックバスと同じように行き先が書いてあったので、これで間違いなさそう。

一応、明日の準備はできたので、ここのメインのグアンタナモ米軍基地に行くことにする。これまた観光地でないせいか、他のまちでは歩いていたらそこらでぶらぶらしているタクシーの運転手が声をかけてきたのに、ここはそれがない。

バスターミナルまで行けばタクシーも声をかけてくるだろうと思ったが、ここでもそれがない。それで見渡すと250ccくらいのバイクの横で三輪自転車のにいちゃんとおしゃべりしていたおじさんがいたので、もしやと思い、バイクタクシーかと聞くと、"Si"と応える。

それでメモしてきた手帳を見ながら米軍の基地に行きたいんだけどと言うと、そのおじさんは"No se puede(できない=行けない)"と言う。そこへ40代くらいの別のバイクタクシーの人が来て、どこに行くんだというので、同じ所を言うと、その人もダメだという。

事前情報では米軍基地の入り口まで行けるとあったのだが、何か状況が変わったのだろうか。

ロンリープラネットの古いのがハバナの宿にあったので、それを持ってくればもっと情報がわかるのだが、あいにくコピーなどを持ってきていない。

しかも時間も16時をまわっている。基地までは40kmくらいと聞いていたので、おそらくタクシーで行っても1時間くらいかかる。明るいうちには着きそうだが、タクシーを新たに探す気にならず、また往復で80kmくらいとすれば持ちカネではきっと運賃が出ないだろうなと思い、早々に断念する。

例のごとくぶらぶら歩きながら帰る。さすがにグアンタナモ州の州都だけあって、舗装されている地域が広い。途中、道ばたでマメイという果物を買う。見た目はなんだかわからないが、灰色でラグビーボールのような形をしている。1個3ペソというので、10ペソ渡すとゲバラコインの3ペソコインとお札混じりでお釣りをくれた。ラッキー。

マメイはふかした甘いサツマイモに近い味がする。皮を手で向いて食べる。

途中、学校らしき敷地の中にバスケットのコートがあり、そこで遊んでいる10代後半くらいの男の子たちを見る。ダンクを何度もしたのか、傾いたリングにめがけてシュートをするのだが、わりとイージーな距離からでも外すのであまりうまくはなさそう。

この時点で距離としてはすでに馬車に乗っていた距離を歩いているのだが、いまいち帰り道がわからなくなる。それで通りがかりの三輪自転車のおじさんを捕まえる。

宿の近くにあるホセマルティ広場に行きたいと言うと、にこにこして乗れという仕草をする。乗り込む前に料金を聞くと10ペソと言う。確認するが10cucではなく、10ペソ。こういう個人営業の乗り物に乗るときにペソの金額を言われた=地元の人と同じであろう金額を言われたのは初めて。

そのおじさんは一般に言われている陽気なキューバ人を体言しているようなおじさんで、行き交う人に声をかけ、スカートのお尻のチャックがちゃんとしまってないおねっちゃんにそのことを伝え(ているように思った。)、怪訝な顔をされてもにこにこして、また別の人に声をかける。

こっちにもいろいろ言ってくるのだが、例のごとくよくわからない。無事目的地に10分足らずで到着。広場の周囲をぐるっと見てまわるかというような仕草をするが、すでに見ているのでそれは断る。そして代金10ペソを払うと、またなというような身振りをして去っていった。

ハバナやサンティアゴであれば確実に5cucくらいはまずふっかけられたであろう距離だったが、最初から10ペソのみ。きっとこのおじさんは古き良きキューバ人と言える人だったのではないかと、後にサンティアゴなどに戻ってから思った。

そう思った背景には、指さし会話帳の著者が書いていたことがある。その著者は91年に初めてキューバに来てその後留学もするなどどっぷりキューバにはまってしまったらしい。しかも、ちょうどキューバがソ連崩壊後の経済危機から現在のような二重経済に移行するまでを間近に見てきたという。

その著者が、最近(2001年時点の記述)、ハバナのホテルでベッドメイキングをする人にチップとして枕元におカネを置いて外へでかけ、戻ってみたらそのベッドメイキングをしているおばさんが、おカネが落ちていたよと教えてくれたらしい。そのことに、著者はまだこんなキューバ人がいたのかと感動したと書いていた。

これが約7年前の話だから、おそらく今の方が、外国人を見てcuc=カネの稼ぐ絶好のチャンスと考える人が多くなっているだろう。そんな中で、観光地ではないということもあるかもしれないが、地元の人と同じ金額を言うとは、すばらしい! このおじさんにこそもっと払っても良かったが、それはプライドを傷つけるかもしれないと思いやめる。しかもちょうどいいおカネもなかったし。

マルティ広場で三輪自転車をおり、晩飯を食べるレストランを探す。例のごとくあまりよさそうなところがない。1カ所、ベジタリアンと表に書かれたレストランがあったので、そこに入る。が、これが失敗。

メニューを見ると肉も魚もある。加えて、メニューの中でも今日できるものは半分程度のもの。それでよくわからないが、適当に2皿頼み、あとグアバジュースを頼む。客は他に2人客のみ。

水が出てきたので飲むともろにカビ臭い。きちんと冷やされてはいるが、20年前くらいに東京で飲んだまずい水と同じような味。よって、自分で持ち歩いていた水を飲む。

出てきた料理は直径20cmくらいの皿にインゲンと何かを炒めたようなものとシーチキンみたいな物を炒めたもの。どちらも同じ味。まずくはないけど、なんともさびしい。5分ほどで完食。物足りない。

お代はこれだけで5.8cuc(700円くらい)。まったくがっくりですよ。それでもう一軒行くことに。マルティ広場のまわりの店を見渡すと、行列ができている店がある。20~30人は並んでいる。

グアンタナモで行列ができる店ってどんなところだと思い、その列に並ぶ。看板にはPIZZERIAとあったので、どうもピザ屋のよう。ほんとにキューバ人はピザが好きだ。

行列は外にできており、空席ができると店の人が外の客を呼びに来る。

列に並んで20分ほどして、ぼくよりも前に並んでいた人が、ぼくに1人か? と聞いてきたので、そうだというと、先に行ってと言われる。

1人用の席が先に空いたからなのかなと思いながら店内に入ると、今しがた一緒に店に入った女の子3人組と同じテーブルに座るよう言われる。

店内を見渡すと1人席などはなく、ほぼすべて4人席で、他にも相席をしてるらしき人がいる。

女の子たちが先にメニューを見て、その後、手渡される。値段がほとんど1桁だったので、ここもcuc払いかと思っているところへ、店員が女の子たちのオーダーを聞きに来たので、女の子たちのオーダーを聞いてぼくも女の子たちが頼んでいたピザとマンゴージュースを頼む。

しばらくして水とジュースが来る。水はさっきの店と同じようにまずい。ジュースもなんか偽物っぽい。

それから5分ほどで女の子たちが頼んでいたスパゲッティが
3皿来る。あれ、ピザも頼んでいたのに、スパゲッティも3皿?と思うが、女の子たちはせっせと平らげる。

そう言えば、ぼくがオーダーしたときにピザを注文した後、店員がスパゲッティは?と聞いてきたので、どうもここでは両方を食べるのが当たり前のよう。

まわりの席を見ても、確かにみんな両方を食べている。

ちなみにこの女の子たちは見た目10歳くらいで小学校高学年くらいの感じ。そんな女の子が3人でこんなところにくるなんて金持ちなんだなと、勝手に邪推する。

彼女らがスパゲッティを食べ終わってから待つこと20分ほど、店員が片方の手に10枚くらい皿を乗せて来る。日本ではせいぜい片方の手に3枚が限度だし、うまく皿の縁に余裕があればもっと重ねることもできるが、それにしてもここの店員が持っている枚数は多すぎる。

どうやって持っているんだろうとよく見てみると、なんてことはない、ピザの上にも皿を乗せている。もちろん縁の方が交互に重なるようにしてはいるので、ピザの真ん中は大丈夫なのだが、縁のチーズなどがあまり乗っていない部分は、完全に上の皿の下敷きになっている。

実際、同じテーブルの女の子に配られたピザは、縁の部分がへこんでいた。女の子は別に気にする風もなく、すぐに食べ始める。おもしろい。

ぼくはチーズとソーセージを細かく切ったようなピザが出てくる。道ばたで売っているのと同じように直径20cmくらいあり生地が分厚い。

スパゲッティにこのピザなんて、大人でもけっこうな量になるのにと思っていたが、1人の女の子はぺろり。残りの2人は最後、けっこうきつそうだったが、やはり完食。ピザは4枚胆でおり、それもみんなで分けて食べるのかと思ったが、さすがにこれはお土産のようで、適当にピザを折り曲げ、持ってたビニール袋に入れた。

そして彼女らは代金を払う準備をし出す。お札が20枚倉見えたので、やっぱり金持ちなんだなと思っていたら、よく見るとそのお札はペソクバーノだった。えっ、なんだぁ! と、ここで、ようやく本当の事態がわかる。

なんてことはない、ここは安くピザとスパゲッティが食べられるところだったのだ。

そうとわかったからには方針変更。最初はおカネを気にして店員の薦めでも断ったスパゲッティを食べてみることにする。みんながこんなにも食べているものはどんなもんか、無性に気になる。ついでに周りの人が頼んでいたデザートも。

メニューをもらおうと店員に向かって手を挙げると、店員は会計かと思って、金額を知らせに来た。メニューをくださいというと、一瞬、エッと言う感じで聞き返してくる。

メニューを無事もらい、スパゲッティと適当にデザートの欄にあったものを頼む。店員は怪訝そうに注文したオーダーを繰り返す。注文したときと同じ店員だったので、店員からすればあのとき断ったのになんで今頃?、とでも思ったのであろう。

スパゲッティは5分ほどで出てくる。麺はぶつぶつ切れて短く、かかっているソースもなんだかトマトソースとウスターソースを混ぜて水で薄めたような味で、はっきり言ってうまくはない。塩気もない。ふ~ん、こんなもの食ってるんだと感心。それとも自分のだけ、こんななのだろうか。

デザートはシフォン生地にプリンが乗っているようなもので、これはそれなりにうまい。

それにしてもスパゲッティはショック。サンタクララで食べたスパゲッティはもっとまともだったのに、なぜ?

そんでお会計はと言うと、スパゲッティが3.6ペソ、ピザが3.9ペソ、ジュースが0.6ペソ、デザートが2ペソくらい。よって合計10ペソ(50円)もかからず。なんということだ!道ばたのピザ(だいたい5~10ペソ)よりも安い。行列の意味がようやくわかったのでした。

満腹になったので、宿に帰る。

部屋の横にあるシャワー室にシャワーを浴びに行く。水量は弱い。お湯もいまいちお湯にならない。しかも足下のタイルには糸ミミズみたいなものが数匹うようよしている。

見た目は良かったが実体はなんとも厳しい宿だ。15cucに値切って正解だった。ベッドはダブルベッドだから広い。扇風機も冷蔵庫(電気は入っていない)もエアコンもある。しかし、サンタクララと同じように冷蔵庫は過剰投資だろう。

寝る。

2008.3.4(火)
キングストンよりアップ

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