2008年3月5日水曜日

グアンタナモからサンティアゴ、そしてハバナへ

2008.3.1(土)

朝は6時半頃に目覚める。朝食は7時半に頼んでいたので、それまで身辺整理。

7時頃、ブザーの音が鳴る。雇われている人が来たよう。7時半過ぎに中庭に出ていくと朝飯の準備ができていた。ベーコンエッグのようなものと果物(みかん、バナナ、グァバ)、オレンジジュース、コーヒー、パン。

8時半頃、宿代15cuc(約1800円)と朝食代3cuc(約360円)を払い、宿を出る。昨日はターミナルまで馬車で行ったが、今日は荷物があるのでビシタクシー(三輪自転車)で行くことにする。

ちょうど通りがかったビシタクシーのおじさんに声をかけ、ターミナルに行きたい旨を伝え、いくらか聞く。するとおじさんは、にこっとして人差し指を1本立てる。

”1cuc?”と聞くと、うなづく。距離としては昨日の陽気なおじさんに乗せてもらった距離と変わらないはずだが、やはりそうきたか。昨日のおじさんは本当に古き良きキューバ人だったのではないかと、改めて強く思う。

ターミナルに行くには、坂道もあるので、1cucでOKし、荷物ともども乗り込む。やはり坂はつらそう。かつチェーンが緩んでいるようで、途中でチェーンが外れる。歩道を歩いているおじさんよりも遅いので、チェーンが外れたのをいい機会だと思い、ここで降りると伝えると、聞こえているのかいなかったのか、いいや大丈夫、というような仕草をする。

なので、最後まで乗る。10mほど前を歩いていたおじさんには結局追いつくことなく、ターミナルもどきがある幹線道路沿いに出る。

1cucを払いトラックバスが停まっているところに向けて歩き始めたとき、横から30代くらいのにいちゃんたちが”サンチアーゴ”と言いながら寄ってくる。"Si"と言うと、腕をにぎって自分の乗り合いタクシーの方に連れていこうとする。

それで、ノーと言って、あっちのバスに乗ると言っても、聞かない。彼らのタクシーの値段を聞くと20cuc(約2400円)とのたまう。外国人用のバスでさえ15cucもしないのに、何を言うかと、ノーと言うと、すぐに10cucまで落ちる。

それでも高いので、NOと言うと6cucという中途半端な数字を言う。おそらくこの辺が彼らの下限なのだろう。それでもNOというと5cucになるので、まぁ、それくらいならとOKする。

この車はバンのような形(正式には呼び方が違うだろうが)をしていて、後部には向かい合って8人が座って乗れるようになっている。その8人+助手席に2人。助手席はそれだけの余裕があるので、2人座ってもきつくはない。

その乗り合いタクシーのおじさんに促されるままに車まで行く。荷物をかせというので、渡したら屋根の荷台に放り投げる。つい、”あっ、このバカ”とつぶやく。放り投げるなんてなんてことを。

一応、荷物はロープで縛ってくれたが、どうも心配なので、ちゃんと固定されているか、中身をいじっていないか何度か確認する。

トラックバスの方は、サンティアゴ行きが乗り場にやってきて、待っていた乗客が乗るとすぐに出ていく。客が集まりやすいぶん、やっぱりバスの方が早かったかな、とやや後悔。

乗り合いタクシーの方は、運転手等が声を張り上げ、客引きを行うがなかなか座席が埋まらない。まだ発車する準備もできていないのに、集金に来る。ポケットのお札を出して、5cucだけ渡すとぼくが持っていた別の1cuc札を奪って、"6cuc"と言い出す。はあ?と思い、5と言ったじゃないかと言っても、横に首をふるだけ。

なんだかこういう強欲な奴は相手にするだけ無駄と最近、思い始めたので、はいはい恵んであげますよ、って感じでそのままにする。

なんでこう交通機関の仕事をしている人は、強欲な人が多いのだろうと思ってしまう。観光客に接触しやすく、商売上の裁量が自分に比較的あるからか。あるいは主導権を握っている(自分が運転しないと客は移動できない)と思うからか。簡単に一般化はできないだろうが、経験上ではどうもそのような傾向があるように思えてならない。

やっぱりバスにすれば良かったなと思いつつ、今更乗り換えるのも面倒なので、出発を待つ。20分ほどしてようやく後部に8人の客が確保でき、出発。他の客はどうも30ペソくらい払っているよう。だからバスの3倍くらいか。

エンジンがかかっているのに、運転席にある速度メーターも燃料メーターもゼロのまま動いていない。壊れているよう。どうやって燃料の状況を把握しているのだろう。

車は体感で言うと、時速60~80kmくらいでどんどん飛ばす。30分ほどすると前に出たバスを追い抜く。やはりこちらの方が圧倒的に早い。途中、警察のチェックを受けているトラックバスを見る。どうも人間の過剰積載を発見されたよう。

こちらの車は警察が近くにいる場合以外は、バンバンとばす。

当初、トラックバスで3時間くらい(ビアスールのバスが2時間)を覚悟していたが、タクシーは速かった。1時間15分ほどでサンティアゴに到着。9時20分頃。

3日ぶりのサンティアゴは空気が悪かった。ポンコツ車が黒煙を吹き出しながら走っているから、その排気ガスのにおいがまず鼻をつく。

歩いて中心部に向かう。ジャマイカの宿からのメールを見ないといけないので、電話局に行き、メールをチェック。無事、初日の宿は決まり。

それから歩いてまたバスターミナルに向かう。歩いていたらカーサがどうのと言いながら60歳位に見えるおじさんが話しかけてくる。

いろいろ話しかけてくるのだが、そもそもかすれ声なのでスペイン語以前に単語すら聞き取れない。わけがわからないので、適当にほっておくがずっと付いてくる。

道ばたでおばあちゃんが売っていたお菓子が気になったのでかって食べる。まずまずうまい。それから豆菓子のようなものも売っていたので、そのひっついきているおじさんにあれ何?と聞くが、ココ(=ココナッツ)なんとかとしかわからず。

それで買おうと思い、並ぶとそのくっついてきているおじさんが1枚2ペソというので、2ペソを出していると、もう2ペソという。そして、自分が売っている人に頼んでやるからというような仕草をするので、計4ペソぶんのおカネをおじさんに渡す。

お菓子は2種類あったので、2種類買ってくれるのかと思いきや同じ物を2枚買い、当然のごとく1枚を自分でかじる。そして、これはビエン(うまい)なお菓子だとか言う。

おカネを4ペソぶん渡した時点でうすうす予想はしていたが、やはりそうきたか。いつか読んだ本に、キューバではおカネを持っている人がおごるのが当たり前で、おごられた方はお礼も言わないのが当然とあった。だから、そう来るかもなとは少しは想定していたけど、ほんとにそのとおりになるとは、おもしろい。

もちろんおじさんは、そのお菓子を食べるときに、日本人であればするような”いただきます”というような仕草もありがとうの言葉も言わない。当然のように食う。そして、ぼくが持っている水もくれと言う。

どうもこのおじさんは、バスターミナルまで付いてくるような様子。まぁ、このまま行ったらどうなるか観察するためにも放っておく。歩きながらいろいろにこにこしながら話してくるのだが、前述のようなしゃべり方なので、単語の1つすら聞き取れない。

ときおり、悪い奴が来たらやっつけてやる、とでも言うかのように、カンフーのような手まね、足まねをするのだが、いやいやおじさん、あなたはきっと普通のキューバ人男性が相手だったら軽くふっとばされますよ、と言いたくなるくらい、そのおじさんは細い。

飲み水がなくなってきたので、途中のコンビニのような店で水を買う。するとここでもおじさんがしゃしゃり出て、いらないものまで注文する。それでいらないものは返し、水だけ買う。そのときもおじさんは手助けしているつもりで、自分におカネを渡せというような仕草をする。

水は1.5リットルで0.7cuc。おじさんに渡したのは1cuc。おじさんは1cucを店員に渡し、店員はおじさんにお釣りを渡す。おお、これは知らないふりして自分のものにするぞ、と思いながらおじさんを見ていたら、案の定、手に持ったお釣りのコインをそしらぬ素振りで自分のポケットにしまう。

まったく予想通りのおじさんの行動に、はい、ビンゴ!とうれしくなる。ぼくがおじさんのその行動を見て、ほくそ笑んでいたのをおじさんは気づいていないようだった。

ガイド料代わりに0.3cuc(40円くらい)くらいはいいやと、おじさんには何も言わず、放っておく。

こうして30分ほど歩いてバスターミナルに到着。ぼくはすでに予約しており、おカネを払えばいい状態なので、そのおじさんの手助けはまったくいらないのだが、おじさんはターミナルの建物に入っていき、チケットを販売している窓口のおばちゃんに金額などを聞いて、ぼくに教える。

が、この外国人用のバスターミナルは、チケットの窓口がある建物内にさえキューバ人は入れない。だから、窓口のおばちゃんに、外に出てとすぐに言われてしまう。

ぼくは窓口で予約している旨を伝え、おカネを払い、チケットを買う。そして、そのおじさんにじゃあと言って建物の奥にある待合室に行こうとするが、おじさんがちょっと来いというような仕草をする。顔が少し厳しい顔になっている。

チケットの窓口のおばちゃんは、関わるなとばかりに、ぼくに向かって”セニョール”と言って、奥に行きなというようなことを身振りを交えて言う。

まぁ、そんな大事(おおごと)にはならないだろうとぼくは建物の外に出る。ガイド料の要求だろうなと思っていたら、またもやビンゴ!スペイン語でおカネがどうのと言っている。ぼくはここぞとばかりにスペイン語がわからないふりをする。

それを横で見ていたバスターミナルの職員のおばちゃんは、おじさんにぼくが何を言われているか理解できていないよと言っている。それを聞いて、おじさんは親指と人差し指をすり合わせながら、”カネだよ”みたいな仕草をする。

ぼくはそれでもわからないふりをすると、ターミナルの職員のおばちゃんが、おカネをくれって言ってるのよ、と言ってくるので、そこでああとわかったふりをして、でも、すでに0.3cucを持っているだろ、とおじさんに言う。

そしたらおじさんは、そんなの知らないというようなことを言い、ズボンの右側のポケットに手を突っ込み、コインを取り出し、ほらと見せる。いやいや、あなたが入れたのは左側ですからと思うが、ここでこのおじさんを見限ってしまった。

もし、おじさんが正直に0.3cucを出せばおじさんが要求するガイド料の金額を聞いてもいいかと思っていたが、こうして嘘をつかれた瞬間に、ちょっとあきれてしまい、問答無用で待合室に移動した。

待合室は空っぽで客はぼくだけ。まだ入り口の方で、職員のおばさんの声がするので、なにやらおじさんと言い合いをしているよう。

やれやれと思っていたら、そこへその職員のおばさんが来て、スペイン語で一気にまくしたて、2cucを出せと言ってくる。”2cuc?”と聞き返すと、”1cucはあのおじさんに、そして1cucは私に”(これは聞き取れた)と言う。

どうもなんぼ言ってもおじさんが立ち去らないので、カネで解決しようと思ったらしい。それでポケットから折り畳んでいたお札をポケットから取り出すと、職員のおばさんに手渡そうする前に、おばさんの方からむしり取られる。

たしか、3cucぶんを折り畳んでいたように思ったので、おばさんに”3cuc”と言うと、相手はこっちの言いたいことがわからなかったようで、"2cuc"と言い返し、さっさと入り口の方に行ってしまう。

ちょっと様子を見てみようと、ぼくも入り口が見えるところへ移動する。すると、すでにおじさんはいない。おばさんもきょろきょろ辺りを見ているが、見えないよう。

さぁ、今度はこのおばさんがどう行動するか、が見物と思い、おばさんを観察。そしたら、予想通り、なぁ~んだ、いなくなったみたいというような素振りで待合室の方に戻ってきて、そのままトイレ掃除をしだす。

つまり、ぼくが渡したおカネを返すことなく、そのまま自分の懐に入れてしまう。そうくるとは思ったが、もしや掃除が終わった頃に、そうそうこれを返さなきゃと、返してくれる可能性もゼロではないかもしれないと思い、何も言わず放っておく。

そしたら、さっきまでのプンプン怒り口調だったおばさんは、ハバナに行くの?とやさしい声で聞いてくる。"Si"と応えるとうんうん、とうなづいてそのまま去る。臨時収入が入って機嫌が良くなったのか?

結局、おばさんに渡した3cucは返ってくることはなかった。

おじさんにさっさと払った方が安くついたのかもしれないが、まぁ、いろいろ面白い行動を観察したので、それでよしとする。

そんなこんなで待つこと2時間ほど。ハバナ行きのバスが入ってくる。予定通り15時20分にバスは発車。乗客はスペイン人らしきおばさま方3人組とドイツ語をしゃべるおじさん2人組とぼくだけ。

ドイツ人のおじさんはサンティアゴで地元の女の人とできてしまったのか、車内でキューバ人らしき女性と抱き合っている。おいおい、おっさんと思っていたら、バスが発車。

おじさんはあわててバスの運転手に、彼女は降りる、みたいなことをドイツ語とスペイン語混じりでいう。

明るいうちにバスに乗れば景色を楽しめるかと思ってこの時間にしてみたが、これは当たり。サンティアゴに来るときは夜だったためまわりの様子がわからなかったところがだいたいわかる。

それにしても車内は寒い。気温計を取り出すと18℃。外は30℃くらいだったから一気に10度も下がる。みんな上着を取り出し着込んでいる。なんでこうなるんだとキューバのバスにはあきれる。この点は、トラックバスの方がまともだ。
やれやれ。

夜になると冷房も弱まり、まだましになるが、それでも寒い。この辺がわからないバスの運転手の感覚がわからない。もしかしたらキューバ人の肌感覚で温度調節しているのかも。でも、キューバ人にしても寒いと思うのだが。

19時には車内の電気は消える。寝る。

2008.3.4(火)
キングストンよりアップ

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