2008年3月13日木曜日

『ボーン・フィ・デッド』より

読んだ本からの抜粋

原題
"Born Fi' Dead: A Journey Through the Jamaican Posse Underworld" by Laurie Gunst,1995
日本語版
『ボーン•フィ•デッド ジャマイカの裏社会を旅して』森本幸代訳、2006

ボブ・マーリーとも付き合いのあった良心的?ギャングだったトレバー・フィリップス(1997年に殺害される)の言葉
280-281
「丁度中学出たてだったからかな、ムショで最初に読んだのはバートランド・ラッセルだった。それからH・G・ウェルズの『アウトライン・オブ・ヒストリー』。人にもらってネルソン・マンデラの『ノー・イージー・ロード・トゥ・フリーダム』も読んだんだけど、この本は俺の人生にすごく影響を与えたね。マンデラは南アフリカでどんな風にイギリス人がインド人と黒人を戦わせてたかを書いてあってね、ジャマイカと一緒だなって思ったよ。

俺も親父がインド人だったからよくいじめられたもんさ。ラスタなんか俺のこと『インド人』って呼んでてさ、『ようインド人、俺らがみんなアフリカに帰ったらお前はどこに行くんだ? お前は黒人じゃないし、白人でもない。お前の体は二つに裂かれちゃうぜ』って言うんだ。

俺自身そんな経験があったから、マンデラの本読んで植民地支配のもたらすもんはどこでも一緒なんだって分かったんだ。問題も、疑問もひとつにまとまったってゆーかね。それからはまたバカみたいに本読んだ。エルドリッジ・クリーバー言うところの、『自分を救うための読書』さ」


333
同じくトレバーの話。キューバとの関係について

「キューバとのブリガディスタ交換プログラム。それに参加したラスタが、キューバ人ホストに無理矢理豚肉を強要されてベジタリアン暴動を起こした話。(ラスタは肉を口にしない) 彼等は人生四分の1を暴動に捧げたという。

それから1977年にフィデル・カストロがジャマイカを公式訪問をした際、ラスタと握手をするのを避けていたとか、ジャマイカがキューバと親交を深めるとアメリカがヒステリーを起こしたなど・・・」

「「ほら、あんたも知ってると思うけどさ、あれだけ大々的に宣伝しといて、結局カストロはジャマイカ人が嫌いだったんだぜ。ラスタが原因だったかは知らないけどさ、キューバ人にとっちゃ俺らはトラブルメーカー以外の何者でもなかったんだよ。俺らは革命に使えないってね。カストロは俺らに手を貸す気なんかはじめからなかったんだ」

トレバーの話では、PNP党員はキューバから銃を支援してもらえるとずっと信じていたそうだ。しかしそれも結局ただの夢に終わる。1980年の選挙前、シアガがCIAの助けを借りて武装している時も、PNP党員はキューバに銃の手配を要請していたが、あっけなく期待は破られる。カストロはジャマイカを次なるアンゴラにする気などなかった。」

338
トレバーから著者への手紙から
「ーーもしあんたが俺と同じくらいジャマイカの流れをみつめてきたなら。暴力で命を落とした人間を知っているなら。政治抗争していたギャングがアメリカのドラッグポシーに変化する課程で、俺と同じくらいあんたが死んだ人間を見てきたなら。原因は社会が人種差別を乗り越えられなかったことにあるってわかってるなら。特に若いやつらなんか今の事態を予測できたはずだ。

ポシーのほとんどが黒人やスペイン系、ジャマイカ生まれか、そうでなければ行き場のない白人達だ。スーパーキャットが「若い奴らのことを思うと泣けてくる」って歌う気持ちも分かるだろ。

ドンが死んだりムショに入れられたら、若いヤツ、野望をもってる奴、食うために必死な奴は次のドンを狙ってる。もちろんそのリスクはやつらも承知の上。バンドの演奏を続けさせるための、バンドリーダーになるわけだ。

恵まれた人間は暴力を避けて暮らせるけど、俺らは毎日暴力と共に生きなきゃなんない。

俺が確認したいのは、ほんとにあんたが俺らのことを理解しているかということ。あんたが毎日死んだ人間の数を数えながら床に就いたり、目を覚ましたりするようになって初めて俺らの現実を理解するようになるだるお。あんたの友達や家族が殺されて、やっと俺らのことがわかるだろう。

ジャングルやティボリ、クラックハウスさえ知らなければ、その外で生きられたなら、大学に行って学位を取り、殺されずにすんだ奴らもいるんだ。--」

339
「--これだけは覚えておいて欲しい。あんたがどれだけ俺らに同情しても、俺らのことを「調査」しても、この残酷な世界に捕らわれた悲しみは、俺らにしかわからない。この苦しみは、俺らにしかわからない。--」



2008.3.12(水)ハバナよりアップ

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